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盛岡の舟っこ流し

 

精霊の旅立ちに三途の川を想定し、様々な舟を作り、送り出す風景が見られるのも、全国的である。

川や海が汚れると燃やす所は少なくなったが、岩手県盛岡市の「舟っこ流し」は新盆の家々から大小の精霊舟を北上川土手に集め、僧による供養の後川中で燃やす。龍を形どり、五色の短冊や吹き流し、杉の葉などで飾られた精霊舟が男たちに担がれて川の中央へ、両岸には遺族はもとより、大勢の人々が見送る中、炎に包まれながら彼岸の世界へと旅立つ。

 

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26] 盛岡市の船っこ流し

 

長崎の精霊流し

 

舟数の多さとにぎやかさで知られるのが長崎市の「精霊流し」である。新仏の霊を西方浄土へ送る儀式だけに、それぞれ大小様々の木舟を作り、親類縁者を集め「ドーイ、ドーイ」の掛声で、鉦をならし爆竹でドンパチやりながら、精霊舟を担いで街の通りを海へ駆けていく。今では海の汚染を恐れ、市が波止場で回収、処分している。

 

三戸の精霊流し

 

神奈川県三浦市三戸の精霊流しは、共同でわら舟を張り、各家から持ち寄った盆の供物を積んで、少年たちが泳いで沖へ引き出し、潮の流れにまかせる。

青い海を舞台に詩情豊かに演出するのが島根県隠岐のシャーラ舟である。木の龍骨に竹を組み、麦わらで巻く。大きな舟は大人が組み立てを手伝うが、主役は子供たち。麦わらを集め、何日もかかって色紙で舟を飾る。地区によって大小様々のシャーラ舟ができあがる。舟に仏壇の供物を積み、老人たちが岸辺で念仏を唱えて見送る中、船で沖へ引いて行く。昔は湾の外で流れにまかせたが、今は湾の出口で岩陰に置く。

 

京都の大文字焼き

 

舟の代りに盆に訪れた精霊たちを火で送り返すのが京都の大文字焼き。大文字山に穿った七十五の火床に薪を積み上げ火を点じる。大の火文字が夜空に浮かび上る。火は一人の意で、七五の煩悩を燃やす護摩修行という説もある。起源は様々で、一説によると約千二百年前、京洛に流行した悪疫を鎮めるため、弘法大師が浄土寺中腹に護摩壇を設け、帝の御心を安んじるために祈祷したのが始まりと言われる。

点火日の朝、山麓の浄土院では、精霊送りの護摩木奉納の受付が始まり、多くの人が祖霊供養の護摩木を奉納する。

 

 

 

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