7] 子供のどじょうすくい
我国は仏教国でもあり、八百万の神々が治める神国でもある。先人が遺した山岳宗教の文化遺産も生きている。
それらが祖霊供養の盆行事に、様々な複合された形で表現されている。北から南まで南北に長い日本列島の風土の差が人々の心情に変化を与え、世界に例を見ないほどの柔軟で多様な宗教観を育てあげている盆の行事は興味深い。
姫島の盆踊り
姫島(ひめじま)の盆踊りは、日本人の他界観の一面を実によく映し出している。姫島村は大分県東国東(くにさき)郡にあり、国東半島から東へ五・五キロ。周防灘(すおうなだ)に浮かぶ小島だが、盆の夜の踊りの面白さは格別で、民俗学者の故和歌森太郎氏が強い関心を示した盆踊りである。
踊りの始まりは、平安期の空也上人の念仏踊りからという説もあるほど伝統が古いのだが、島に生きる老若男女、子供たちまでが、それぞれ性別、世代別にグループを作り、伝統もの、新作もの織り交ぜて踊りや寸劇を披露する。化粧、装束にも工夫を凝らし、盆の夜を太鼓、盆歌に合わせ存分に楽しむ。
子供たちはキツネ踊りやタヌキ踊り、少女たちは衣裳も華やかな花笠踊り。男女のベテランたちが鮮やかな身のこなしを見せるアヤ踊り。観客をどっと笑わせる若者たちの寸劇では、トラさんのもの真似なども登場する。これらの踊り組が、島内七カ所に設けられたツボと呼ぶ踊り場を順次巡って笑いの渦を巻き起こし、夜が更けていく。