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しかし調理や配膳は奥の料理ベヤとそのニワでなされる。なぜクドがダイドコのニワにあるかというと、煙が主屋内をまわり、木部に艶が出ること、虫よけになること、部屋を乾燥させるなどという生活の知恵によるものであるという。

離れと主屋の結合部にある「髪結部屋」は女性の化粧室・私室で箪笥なども持ち込まれる。離れは4室からなり、最奥の庭に面した8畳が座敷であり、この丸床柱、釘隠し、チュウレン(腰高窓)は天保年間より日野でよく用いられた手法であるという。離れは最も格式高く、重要なところであることから床下に木炭を敷いて湿気を防ぐなど非常に大事にされた。

離れの東の建物はミソ蔵と呼ばれ、その南には昭和30年中頃まで7畳とニワのある建物があり、「オトコシ(下男)」部屋として使用されていたという。

屋敷の最奥には三つの土蔵が並び、主屋から敷石が続いている。中央の小さな「文庫蔵」は江戸時代の建築で他は明治以後であり、屋根は焼き落としといわれる二重瓦葺屋根である。これは宝暦の大火の記録にすでに「二重屋根」の名が出ているように、江戸中期以前からの手法である。

現在、当家はすまいとして使われていないが、当家は日野の典型的な町家よりも少し規模が大きいものの町家の特徴を知ることができる貴重な事例といえる。

 

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図5-3-1 村井新町 西田礼三家 平面図

 

 

 

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