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巻頭言

 

21世紀の大交流時代を迎えて

 

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広域連携観光振興会議

議長 石月昭二

 

◇観光振興を国づくりの柱に

21世紀は観光産業が花を開く時代と言われる。世界はますますグローバル化するとともに、アジアを中心に経済発展が進み、人・物・情報が容易にかつ瞬時に国境を越えて行き交う大交流時代が到来する。こうした新しい時代の到来の中で、観光産業はどう対応していくのかが、今、我々に求められている課題である。

昨年12月、観光政策審議会が運輸大臣に対し、「21世紀初頭における観光振興方策−観光振興を国づくりの柱に」を答申した。その要旨は「触れ合いと活力に満ちた観光交流大国日本の実現」を新たな目標に掲げ、具体的な観光振興方策として1]観光まちづくりの推進2]観光分野でのITの積極的活用3]高齢者が旅行しやすい環境づくり4]外国人旅行者訪日促進のための戦略的取り組み5]観光産業の高度化・多様化6]連続休暇の拡大・普及促進と長期滞在型旅行の普及7]国民の意識喚起−を提言している。これは最近の経済・社会環境の変化に対応して、今後取り組むべき方向を示したものである。

バブル経済崩壊後の国際経済社会各分野における構造改革の進展とともに、人々が旅に“安らぎ”と“ゆとり”を求める機運が強まると共に、地域経済の活性化、国際相互理解の促進等に果たす観光の役割に対する理解と認識は広がりを見せ、同時に深まっている。多くの自治体はすでに観光立県運動を展開しており、最近は漸く大都市も観光交流の重要性を認識し、その推進に立ち上がっている。

 

◇多様化する観光ニーズ

最近の観光情勢について言えば、情報革命の急激な進展により、インターネットを使ったFIT旅行者が著しく増加している。人々はいち早く新しい時代を先取りして“個の時代”へと移りつつあり、観光面では旧来型の会社ぐるみの団体旅行から脱皮し、今や少人数・グループでの旅行が主流になりつつある。質的にもグリンツーリズムや産業観光といった社会学習や専門分野の体験学習、あるいは癒しや家族団欒を求めた旅行など、観光に対するニーズは多様化している。視点を地域に向ければ、まち興しや伝統文化の発掘、魅力あるまちづくりが草の根運動として広がりつつある。

このように国民のライフスタイルが変わり、人々の価値観も変化する中で、我々は21世紀の新たな観光ニーズに応え、魅力ある観光を創造しなけれなければならない。今後の取り組むべき方向が示されたとは言え、その実現は容易ではない。縦割り行政の壁を乗り越えて、総合的な施策を展開することが求められている。また、国内外の観光客に受け入れられる観光地にするには、行政のみならず企業、地域住民、ボランティア、NPOといった幅広い分野の人々が一体となって取り組む体制が求められる。

例えば、観光まちづくりであるが、これまで必ずしも観光を意識して都市やまちづくりを行ってきたわけではなく、地域住民もむしろ観光客に対して相互交流を避けてきた傾向がある。

これからの観光は、地域で暮らす人々の生活を通じて、日本文化をより深く理解させる視点が必要になってくる。そのために、何を残し、何を再生していくのかを明確にし、個性的な観光まちづくりを行っていくことが必要である。それらに加えて、人々のもてなしの問題、高齢者等のハンディキャップを持った人々が旅行しやすい環境作りなど、観光に対する課題は山積みしている。

 

◇魅力ある観光創造へ総合的な取り組みを

こうした中で、中央と地方、官と民、地域住民を交え、地域の新しい観光創出のために論議する「広域連携観光振興会議(WAC21)」は大変貴重な受け皿であり、大きな役割を果たそう。今回「南九州WAC21」の開催に当たり、皆さんの積極的な取り組みを期待したい。

 

 

 

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