N 地下水系の諸相
Q183 地下水って汚くないの?
A183 雨が降ったあと、地面を流れる水は汚れていてとてもそのまま飲むことができません。しかし、その水がいったん地下に浸みこんで地下水になって、礫等の地層の中を流れると、砂の中のバクテリアが汚れのもとの有機物をみんな食べてしまいます。臭い、濁り、ばい菌、アンモニア、鉄、マンガン等いわゆる水の汚れがみんな取り除かれ、そのまま飲むことができる程きれいな水になります。
ただ、最近開発されたトリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの化学物質は洗剤として優れた性質を持っていて大変便利ですが、発ガン性のものがあったりし、砂の中の細菌がなかなか分解できない物質もあります。分解してもさらに有毒な物質が生成する場合もあります。そのような化学物質で地下水を汚染しないように、皆で気を付けなくてはいけません。
Q184 地下水って何処からくるの?
A184 地下水は、山や丘や台地など標高の高いところで地下に浸透し、私達の住んでいる都会の地下の砂礫層等の帯水層の中を流れて、やがて海まで達します。途中で川に湧き出すこともあります。私達は井戸をのぞくと深いところに水面が見えます。それが地下水で、川の水と同じように海へ流れていく途中の水です。地下水は川の水と違って、1日に1m程の非常にゆっくりした速さで流れます。
地下水がいつ頃、どのくらい標高の高いところで地下に浸みこんで地下水になったのか、水素の同位体のトリチウムや酸素の同位対比を調べると明らかにできるようになりました。トリチウムは地球の表面では太陽や宇宙線によって絶えず補給されるので一定の濃度を保ちますが、地下では補給がないため、半減期12.3年で減少します。地下水中のトリチウムの濃度を測ると、いつ頃地下に浸透したかが分かります。
酸素の同位体はO16、O17、O18の3種類がありますが、非常に安定なので、地表における存在比はそれぞれ99.76%、0.04%、0.20%で、殆ど変わりません。しかし、細かく分析すると、雲が雨になって降るとき、標高の低いところでは、まずO18を沢山含んだ重い水が降りますが、雲が標高の高いところにゆくにつれ、酸素O18の少ない軽い雨水になります。雨水の酸素O18の同位対比を分析すると高さ100mにつき0.2‰ずつ減少します。地下水の酸素の同位対比を調べることにより、どのくらい高いところで降った雨が地下に浸透したかを知ることが出ます。
また、地下水の中に溶け込んでいる陰イオン(SO4−−、HCO3−、CL−)、陽イオン(Na+、Ca++、Mg++)を調べることにより、地下水がどのような地層を流れてきたのか、そのおおよその経路を知ることができます。