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一方、陸上に住む植物は、水中とは違った環境に適応するために様々な適応法を獲得する必要があります。乾燥から身を守る必要から体の表面はクチクラ層で被われています。クチクラ層は水も空気も通しませんから、光合成のための二酸化炭素を取り入れるための気孔が体の表面に発達します。さらに、水分や養分を吸収するための根、体を支えたり水分や養分を運ぶ通路となる組織が発達しています。陸上植物はこのような組織を補強するためにリグニンという物質をつくります。乾燥に耐えるスポロポレニンという丈夫な材料でつくられた胞子や花粉をもっています。

こうして見てくると植物が陸上で生きていくために作り出した器官や材料には丈夫なものが多いことがわかります。そのため、陸上植物に特徴的な器官や材料は化石として残りやすく、事実、オルドビス紀の終わり頃には胞子の化石が、また、シルル紀にはクチクラの断片や、水分や養分を運ぶ通路となった組織の断片の化石が見つかるので、当時すでに植物が陸上へ進出し始めていたことがわかります。ただし、植物の体全体の化石は発見されないので、陸上への適応はまだまだ不十分なものだったのかもしれません。

やがてデボン紀になると、体のほぼ全体が保存された陸上植物化石が見つかるようになります。この植物は、根も葉も無く、茎が先端に向かって分岐してゆくだけの単純な形をしていましたが、軸の表面には気孔があり、空気中から二酸化炭素を取り入れて光合成を行う植物であったことがわかります。こうして、デボン紀のはじめには植物が陸上に本格的に進出し始めたのです。

さて、断片的な陸上植物化石とほぼ同時に、シルル紀の地層からは、肉食性の節足動物であるクモやムカデの仲間の化石が発見されています。このことは、すでに、脊椎動物が上陸する前に陸上では肉食動物を養うことのできるほど豊かな生態ピラミッドができあがりつつあったことを示しています。

 

Q111 脊椎動物の最古の祖先は何ですか?

A111 カンブリアの大爆発で生まれた様々な動物達の中に、私たち人類を含む陸上の脊椎動物にむかう進化への「最初の一歩を踏み出した」生き物がいました。それは、ピカイアです。今も生きているナメクジウオに良く似た化石で、魚のように体にそってくの字に並んだ筋肉が保存されています。また、背中にそって長細い棒状の構造が見られます。これは、脊索と呼ばれるしなやかな棒状の構造で、私たちの背骨と同じくからだを支える役目をしています。背中に体を支える棒状の構造があるので、ナメクジウオやピカイアは脊索動物とよばれています。さて、上にはピカイアが「最初の一歩を踏み出した」と書きましたが、実際には脊索動物にはまだ一歩を踏み出すための手も足もなく、体を左右にくねらせ、ヒレでバランスをとりながら泳ぐ動物でした。

 

Q112 最古の脊椎動物は、どのようなものですか?

 

 

 

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