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隕石は地球圏外からやってくる物質だが、その故郷をたどると小惑星帯に行きつく。太陽系惑星は、45億年前、ちりとガスの混合物である星雲から形成されたと考えられている。隕石のなかにも、ちりのような細粒で炭素や水などの揮発性物質を含み、あまり高温になったことを示さないものがある。これらの隕石は炭素質コンドライトとよばれている。その中でももっとも始原的とされるのが、フランスのオルゲイユに落下したものである。

隕石がどこから来たのかがはっきりしないと、太陽系についての物質分布の様子は明らかにならない。落下の軌跡がわかっている隕石の軌道を計算すると、火星と木星の間に分布している小惑星帯に故郷をたどることができる。隕石がつくられたもとの小天体を隕石の母天体という。太陽系初期にできた微惑星や原始惑星に相当する。小惑星はその母天体が衝突により分裂したものである。その反射スペクトルの観測から、表面物質の推定されている小惑星も多い。現在までに探査された惑星やその衛星、小惑星や隕石の母天体を見て行き、水の故郷を探ってみよう。

 

2.1 炭素質コンドライトのある天体

炭素質コンドライトについては、元素の宇宙存在度ですでに述べた。隕石には、鉄隕石、石質隕石と石鉄隕石の3種がある。炭素質コンドライトは石質隕石に属し、その名の示すように普通、約1-5重量%の炭素を含む。水などの揮発性成分に富むものが多く、層状ケイ酸塩鉱物も含む。後で述べるコンドライトの特徴を示すコンドルールを含むが、比較的大きな単独のカンラン石の結晶も含む。それらのすきまを埋めるよう存在するマトリックスとよばれるものには、より鉄に富んだ、より小さなカンラン石が含まれている。マトリックス中の最も細粒な鉱物はよく研究されていなかった相という意味で、PCP (poorly characterized phase)とよばれる。低温で生成された鉱物なので、太陽系星雲のちりがそのまま残っているのではないかと考えられていた。最近の電子顕微鏡による研究では、炭素、硫黄、鉄を含む層状の鉱物であることがわかってきた。しかし、その組織の特徴から、カンラン石や金属鉄から低温の水溶液による変成作用でできたという説もでてきている。

このような隕石がきた故郷がどこにあるかを調べるには、これらの鉱物から光が反射されてくる時、特別な波長の光が吸収されることを利用する。望遠鏡に分光器を取り付け、小惑星から反射されてくる光を調べることにより、炭素質コンドライトが表面にある小惑星を探すことができる。小惑星からの反射スペクトルを、隕石の反射スペクトルと比較することで、どのような隕石がどこの小惑星にあるかを探査することができる。この方法の詳しい原理と実際の観測でわかったことを、広井氏より資料収集した。

主ベルト小惑星帯のなかには、炭素質コンドライト的な反射スペクトルを示す表面をもつものが多く観察されている。これらはC型の小惑星と呼ばれるが、そのスペクトルにも水を含んだ層状ケイ酸塩鉱物が見い出されている。最も大きな小惑星セレスおよびパラスもこの種のものに属するが、脱水などかなり変化を受けた表面をもつものだと考えられている。

セレスという直径約1000kmの小惑星は、今世紀最初の年に発見された、第1番目の小惑星であった。その反射スペクトルを地球上の望遠鏡で観測すると、可視光から近赤外の光をあまり変化なく反射する暗い物体であることがわかっていた。このような小惑星は炭素質コンドライトに似たものであるとされていたが、具体的にどのような隕石に似たものであるかは、よく解っていなかった。

 

 

 

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