他者との出会い、自分との出会い
八島陽子(新潟大学医学部5年)
今回の研修に参加できたことは、私にとって何よりのありがたい経験であり、他では得難い仲間たちとともに、いろいろと考え、話し合った一週間は新しい発見に満ちていた。
一つはフィリピン現地以外ではできなかった発見、もう一つは今回の仲間との交流を通じての発見であった。発見の内容を列挙するならば、前者はWHOについてであり、フィリピンという国の医療体制についてであり、フィリピンの医学生たちについてであり、フィリピンの抱えるごみ問題の象徴についてであり、日本人のNGOスタッフの姿であり、後者はフィリピンの自分と違う考え方の仲間たちについてであった。そして総合的な発見として、自分についての発見が得られたことが一番の収穫であった。
一週間のプログラムは、建物の中で役人の話を聞く講義と、実際の現場を見て歩いて回る現地調査の二つに大きく分けられる。どちらも経験して、その余韻が自分の中で消化しきれず、うずいているようなときも、他の仲間と話し合うことで、彼等の受けとめ方と自分の受けとめ方との違いに意識的になっていった。
ちょうどそんな時、現地JICAスタッフの日本人の方に話を聞く機会があった。なぜ国際保健の現場を選び、他の選択より経済的に社会的に安定の少ないと思われる仕事を選んだのか、に質問がいく。自分が何をしたいかがとても大事な選択の基準であり、自分がやりたいことを見極め、選んだことに自分の中で納得のいく理由を見つけていければ、いいではないか、というのが、その方から私が得たメッセージであった。
私は、「マス」を扱う考え方に関心が強い自分を発見した。それは、今回ならではの非日常的ともいえる「他」との接触により得られたものだった。他の人達がいた故に、違いを意識することで、自分を見つめることができた。同じことは、フィリピンを見た故に、日本の現実が今までとちょっと違った目で見られるようになったとも、WHOを見たために日本の医療政策が違った目で見えてきた、ともいえる。他者との接触で己に気付くこともあり、その他者が気付いていないことに他者だから気付けることがあるかもしれない。
また、不勉強な自分というのも発見した。医者の世界は専門的になってゆく過程かもしれないが、せめて自分の関心が少しでもあることでも、積極的にいろいろな情報を吸収していく姿勢を持ち続けていきたいと思った。
これからも他者を知り、自分を知っていきたいと思う。
最後となりましたが、今回このような貴重な体験をさせていただいたことに感謝申し上げます。同行して下さったバルア先生、財団の方々はじめ、今回であった全ての方々、本当にどうもありがとうございました。