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<感想>

私は、ハンセン病についていくつかの本を読んだことがあったが、差別や強制隔離を受けた経験のある方の「生」の訴えは、重みがありすぎた。ハンセン病患者の隔離政策は社会の偏見を助長こそすれ、正すことはしなかった。政府は国民に正しい知識を与え、患者に対しては病気を治し社会復帰させる方向に持っていくべきだったのではないだろうか。

 

2) 「開発途上国と結核対策」(14:45〜16:00)

(財)結核予防会結核研究所 疫学部疫学課 課長 吉山崇 先生

 

結核は空気感染で、排菌者の飛沫中の結核菌を吸い込むことにより感染する。発展途上国では成人の主要な死因となっており、WHOにより推奨されているDOTS戦略(※)による治癒率は70%以上と高く、患者発生の大幅な減少が期待されている。一方で近年、途上国でも糖尿病患者が増加し、高齢化も進行してきて、結核のリスクファクターが増加している。

 

※DOTSはDirectly Observed Treatment, Short-courseの略で、ヘルスワーカーや地域の人、家族の監視下に6ヶ月間確実に薬を服用させる方法である。途上国における結核の診断には、胸部レントゲン写真ではなく、病状をよりよく反映する「喀痰のZiehl-Neelsen染色」が用いられている。喀痰検査により、簡単な設備だけの末端の診療所でも診断が下せる。DOTSには以下の5つの具体的戦術がある。

<DOTS戦略の5つの柱>

1] 結核対策への政府の強力な取り組み

2] 有症状受診者に対する喀痰塗沫検査による患者の発見

3] 確認された全ての喀痰塗沫陽性結核患者に対する、適切な患者管理の下での標準化された短期化学療法の導入

4] 薬剤安定供給システムの確立

5] 整備された患者記録と報告体制に基づく対策の監督と評価

 

講義終了後も質問が相次いだ。その中からいくつかを記す。

(1) 近年日本で結核患者が増加していることについての問題点

1] 治療の面で

患者が毎日きちんと薬を服用しているかの確認が甘い。入院中でさえ飲んでいるか監視をしていない病院が多い。家では家族に確認してもらう方法を取り始めている所もある。

2] 患者管理・報告システムの不整備

保健所などが患者が治癒しているかなどの把握をきちんと行うシステムを持っていない。

 

 

 

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