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子供には未来がある。私がその芽を大きくする手助けができないだろうか。私はこれから医者という職に就くわけだけれど、この技術を使って生命の危機に脅かされている子供を救う手助けが、私にできないだろうか。

そうすることで子供の可能性を伸ばしてあげたり、生きていく楽しさを示すことができるんではないだろうか。心に残せるものがあるのではないか。こういったことを実現するのに一番合っているんじゃないかと思ったのが、国際医療に携わることなのではないかと私は思ったのだ。でも私は実際に海外がどういった状況であるか、どのような医療が行われているかということをほとんど知らなかった。是非、学生のうちに自分の目でそういった現場を見てみたい。そうしないとただの夢として終わってしまうような気がして、焦りを感じた。

そんな時に、ちょうど今回のフェローシップの情報を知った。

フィリピンの医療の上から下まで見学でき、さらに母子保健のプロジェクトの現場も訪れることができるなんて、まさに絶好のチャンス!ということでダメモトで応募してみることにした。

熱意が通じたのだろうか、幸運にも高い倍率をくぐり抜けて派遣学生に選ばれることができた。

参加すれば、自分の中で未だモヤモヤしていることが少しはハッキリするかも、という気持ちはあった。また、実際の体験で何かまた考えが大きく変わるかもしれない、とも。とりあえずこの機会を最大限に利用し、大いに吸収してこようと思った。

実際参加してみて今振り返ると、とてもぎっしりしたスケジュールで、かなり大変だった。それに、見ず知らずの人との10日間にもわたる共同生活、他人とのつきあいの難しさもちょっと感じた。

一人じゃとてもこんなに色々なものは見られなかった。本当に自分はツイていたと思う。ただ、最後の方になったら頭が飽和状態になっていたけれど。

私は今まで国際医療、国際保健については全く興味をもたない3年間を過ごしてきたし、参加前に本を読んだりもしたけれど、明らかな知識不足という状態で乗り込んでしまったので、今回の経験を無駄にしないためにも復習したいこと、これから勉強したいことが沢山ある。もちろん医学に関係なくやりたいことは沢山出てきた。まずは、歴史を勉強すること。第二次世界大戦にフィリピンで日本軍が何をしたのか、といったことすら私は知らなかった。さらに、最近の政治、経済状態なども。もちろん近隣諸国のこともほとんど知らない。もし世界に出て働きたいと思えば、まあそうでなくとも、歴史を知っているのは必須のことだ、それはどっちが悪かったとかいうレベルのことではなく、単なる事実として知っておかねばならないことだ。たとえば援助をするにも、その国のあらゆる方面から考えて実行に移さねばならないのだから。また、自国の歴史を知っておくことも、同じくらい大切なことだと思う。自分の国のことを語れない人は世界を語れないだろう。また、自分のルーツを知る、自分ってなんだろうと考える手助けにもなる気がする。自分の中にしっかりした一本の樹のようなものを育てていきたい。(キザーとかいわれそうだな)うまく表現できないけど、やっぱり技術を使うのは人間なんだから、技術を正しく使えるのはもちろんのこと、人間の内面の部分を自分はもっと鍛える必要があると思う。これは一朝一夕にはできないことなので一生の課題だ。また、自分はこれは賛成、でもこれはできませんというような基準を作っておきたい。

 

 

 

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