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團伊玖磨「七つのオペラ」への小試論

声楽家・評論家 畑中良輔

 

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▲オペラ「夕鶴」イタリア公演舞台デザイン

 

昨年十一月、「夕鶴」のイタリア初演があった。これについて当時の状況をローマに長年在住のイタリア文学者坂本鉄男氏が、十一月二十五日付けの「産経新聞」に寄せられた一文を拝借、抄出させていただこう。

―今月上旬、北イタリアの古都パヴィア市と、夏のオペラ・フェスティバルで名高い中伊のマチェラータ市の両市立劇場で團伊玖磨作曲のオペラ「夕鶴」が、神戸オペラ協会(現ニュー・オペラシアター神戸)の主催で上演された。

日本のオペラ「夕鶴」のイタリアで初めての公演であるうえ、指揮者、出演歌手も関西で活躍中の中堅オペラ歌手であると聞いては駆けつけざるを得ない。ローマから片道三百キロの高速道路を走って、マチェラータ市での最後の公演を聴いた。

まず、イタリア人聴衆の反応だが、同じ桟敷にいたイタリア人たちは(イタリア語の字幕もあったため)オペラの筋も分かりやすいし、音楽はわれわれヨーロッパ人にとって違和感はない、と絶賛していた。

実際、閉幕後、協会理事長は手紙の束を抱え、「音楽に魅せられたオーケストラ団員たちから作曲家に渡してほしいと、こんなに沢山の賛辞を依頼されました」とうれしそうに話していた。若いころにこのオペラを書き上げた團伊玖磨氏はさぞ満足されるだろう(以下略)―

既に日本国内での「夕鶴」公演は六百五十回をとっくに超えている。七百回を迎える日も遠くはあるまい。これは「椿姫」や「蝶々夫人」などの人気定番作品を上回る公演回数である。

 

 

 

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