日本財団 図書館


3.3 防食技術の研究

a) 防食性能試験

1) 概要

海洋環境において運転されるA重油燃焼ガスタービンでは、主に海塩粒子として取り込まれた塩分と燃料中の硫黄分の燃焼により生成した溶融塩が高温部材に付着し、高温腐食または溶融塩腐食と呼ばれている腐食損傷が加速されることが懸念される。

このため、高温用材料であるガスジェネレータタービン、パワータービンの動、静翼材料及びコーティング候補材について、ガスタービン燃焼を模擬した高温ガス中において防食性能試験を行った。

2) 試験方法

2.1) 供試材

供試材を表3.3.1-1に示す。

2.2) 試験条件

・燃焼ガス温度 1,300℃

・試験片表面温度 900℃、800℃

・燃料 灯油

・燃焼ガス雰囲気 A重油模擬及び海上雰囲気模擬(S、Na、Kを添加)

・試験時間 100時間

3) 試験結果

ガスジェネレータタービン及びパワータービンの動翼、静翼材料を対象に、高温腐食試験を行い、次の結果を得た。

(各供試材における試験後の侵食深さを図3.3.1-1、-2、-3に示す。)

・試験片表面温度900℃において、外観状況及び断面状況から評価すると、IN738LC、IN792Hf、CMSX-11、FSX-414はほぼ同等の耐食性を示し、Rene80Hはそれらよりも良好な耐食性を示した。またINCO713LCはこの試験片表面温度ではIN738LC等より耐食性が劣った。

・INCO713LCは試験片表面温度800℃において、ほとんど減肉はみられず良好な耐食性を示した。

・ガスジェネレータタービン候補材については、試験片表面温度900℃において耐食コーティングCoCrAlY、CoNiCrAlY、NiCoCrAlYはいずれも顕著な腐食は認められず、良好な耐食性を示した。

・TBCについては、セラミック層の剥離等は認められなかった。

・パワータービン候補材について、試験片表面温度900℃においてはIN100+コーティングが良好な耐食性を示し、試験片表面温度800℃においてはRene77+コーティングが良好な耐食性を示した。

これらの結果を反映して陸上運転試験機を製作し、試験を行なう予定である。

 

b) 塩水噴霧試験

1) 概要

スーパーマリンガスタービンにおいては、海洋環境での運転時に低温で使用される金属部材に塩水粒子が付着する可能性が考えられる。一般にはステンレス鋼やアルミニウム、チタンなどのように、不働態化し表面の保護性酸化皮膜により耐食性が保たれている金属が、環境中に含まれているハロゲンイオンなどにより、皮膜が局所的に破壊されて孔食等の腐食を生ずることがある。この試験では、デミスターの故障等の非常時を想定して、候補材料の塩水付着環境における耐食性を調査することとした。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION