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2.2.2 V型パワータービンの研究

V型パワータービンでは、部分負荷における燃費改善のため、第一段静翼(タービンノズル)の取付角度を可変としている。本タービンの研究では、この「タービンノズル可変機構」の実用化を中心的な技術課題として取組んできた。

 

i) 目標効率の設定

V型パワータービンでは、タービンノズルの取付角度を変化させるため、その翼端と主流通路壁との間に隙間を確保する必要がある。この翼端隙間は、必然的に漏れ空気による損失を伴うが、これはF型パワータービンにはない、V型パワータービン特有の効率低下要因である。

また、V型パワータービンでは、部分負荷での効率を重視しているため、タービン単体としての設計点をエンジン全体としての設計点から敢えてずらして設定している。

これら可変ノズルを設けることに伴う効率低下量を1.0pts以内に抑えることを目標とし、V型パワータービンの設計点効率は、F型パワータービンのそれに比べて1.0pts低く設定されている。

 

ii) 可変ノズル周辺構造の基本設計

固定型タービンの場合、ノズルより内径側に配置する構造物は、タービンノズルによって支持することができる。一方、従来の可変型タービンの場合には、内径側の構造物を支持するため、可変ノズルとは別にストラット(主流ガスにさらされる支柱)を設けるのが一般的であった。しかし、このストラットは、必然的に圧力損失を伴い、特にストラットへのガスの流入角度が変化する部分負荷では、圧力損失が大きくなる傾向にあり、部分負荷における燃費悪化の原因となる。

そこで本研究では、可変ノズルに、自身の荷重に加えて内径側の構造物を支持させることを検討した。その結果図2.2.2-1に示す形態で構造上成立する目処をたてることができた。

可変ノズルの翼端隙間は、性能(燃費)上は出来るだけ小さいことが望ましく、通常、設計点で最小となるよう設定される。したがって、従来の可変型タービンでは、タービンノズルの取付角度の変化に伴い、部分負荷において、この隙間が拡大し、漏れ空気の増大、すなわちタービン効率の低下を引き起こしていた。そこで本研究では、可変ノズルの取付角度を変化させても、翼端隙間を常に一定に保つように可変ノズルの翼端と主流通路壁の形状に「球面」を採用している。

また、可変ノズルおよび主流通路壁は、運転時に高温の主流ガスにさらされるため、半径方向に大きな熱膨張を生じる。そこで本研究では、可変ノズル周りの主流通路壁に運転時の熱膨張に追従するような構造を採用している。

以上により、部分負荷での効率低下を防ぐことが可能となっている。

 

 

 

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