2.1.2 軸流F型圧縮機の研究
本研究では特に定格点で高効率が得られる軸流F型圧縮機を開発することを目的としている。要求性能が非常に高いため開発の過程では解析、要素試験等を行い、その成果を改善設計に反映させている。
a) F型軸流圧縮機翼列
1] 翼列設計
設計作業は性能解析、構造解析、CFD(数値流体力学)解析の結果を元に設計作業を繰返し、最適化するよう実施してきた。CFD解析の一例を図2.1.2-1に示す。
2] 翼列試験
軸流圧縮機の中でも最も重要な第1段動翼については、回転翼列試験装置(図2.1.2-2)にて、動翼チップ部を模した供試体を試験し、設計の妥当性を確認した。翼列試験の結果を図2.1.2-3に示す。また性能解析結果と実測結果では空気流量に関しある程度差があることが分かり、翼列設計に反映させた。
3] 吸気ケースの流体解析
吸気ケースについても、その形状が性能に及ぼす影響が多いため、CFD解析によりその妥当性を確認している。図2.1.2-4に解析結果を示す。
b) 圧縮機要素試験装置
設計・製作された圧縮機供試体は要素試験装置にて試験を行い、その結果を元に更なる改善作業を行っている。本試験装置は既存の2軸ガスタービン及び増速機を含む圧縮機要素試験装置を使用し、SMGTの軸流段単独、遠心段単独、軸流段＋遠心段組合せ試験(F型及びV型)を行う為の装置である。装置の全体外観図を図2.1.2-5に示す。なお、試験の組合せが多いため計測システムについては柔軟に対応できるよう配慮した。
c) 要素試験と改良
1] F型軸流圧縮機単独試験
平成11年度F型軸流圧縮機の製作及び性能試験を実施した結果では、圧力比2.8は達成したものの、流量は仕様値9.5kg/sに対して9.7kg/sと若干大きく、仕様効率88.6%に対して87.7%と未達成であり、サージマージンも不足していた。
合わせて実施した詳細計測により各段毎の圧力分布、温度分布等について評価した結果、第1段動翼出口の圧力分布が外周部で高いことから、図2.1.2-6に示すように、設計時に計画していた一様な分布に近づくように改善設計した。この改善の結果、ハブ側の全温は一部突出した部分はあるもののほぼ一様になり、全体性能としても空気流量が仕様値9.5kg/sに対して9.6kg/sとほぼ仕様値となり、効率は88.6%を達成しサージマージンも問題ないレベルとなった。性能試験結果を表2.1.2-1及び図2.1.2-7に示す。
2] F型圧縮機組合せ試験
供試圧縮機の断面図を図2.1.2-8に、外観を図2.1.2-8に示す。
