事例15
出向先で職場不適応を示した事例―どう対処したか―
38歳、男、中央省庁の課長補佐
入省以来、近県での比較的短期間の出向などはりましたが、いわゆる遠くへの出向はなく、自宅も東京近郊にある職員です。
この度、東北地方の某県の出先機関への出向を命ぜられ、とりあえず単身で赴任しました。
職務としては、出先機関の副所長で、実質的にそこでの仕事の大部分をマネージする立場でした。したがって仕事の内容が大きく変わったというわけではありませんでしたが、より監督者的な仕事が多くなりました。目立って仕事量が増えたということはなかったのですが、責任が以前より重くなり、精神的な負担も増したと考えられました。
職場の雰囲気がよくないとか、部下の職員に問題をかかえた人がいるというようなこともなかったのですが、もともと東京の出身でこれまで地方都市での生活の経験がなく、言葉や風習の違いになかなかついていけず、職場の人たちになじめない感じがあり、何となく浮き上がってしまったように思ってしまいました。家庭の都合で、すぐに妻が任地へ来ることができないということもあって、益々気がめいって来るというような状況になって来ました。
仕事上に特に問題はなかったのですが、周囲からみていても、何か元気なく、口数も少なくなってきたので、周りも何となく心配し、気をもんでいましたが、どうしてあげたらいいのか迷うだけでした。職員数10人余りの小さい職場で、それらの人たちの人間関係は極めてよく、逆に、それだけに本人が中に入っていけないということもあったのかもしれません。たまたま上司である所長が、体調をこわして休みがちであったということも関係していたかもしれません。
心配した職場内の比較的年輩の人がある日、本人に「どうですか、単身赴任で食事も大変でしょう、こちらにも結構うまいものを食べさせるところがあるから、2〜3人で行きますから付き合いませんか」と誘いました。