事例4
職場での外傷(左下肢骨折)後に精神症状を示した事例
―労働災害か否か―
58歳、男、フォークリフト運転手
精神疾患の既往なし
某年7月末、フォークリフトから落ちて左下肢骨折、この時、特に頭を打ったということはありません。
整形外科病院へ一ヶ月入院、経過は良好で、多少足を引きずるものの、しばらくリハビリをすれば大丈夫といわれていました。
この事故の治療については、もちろん、労災保険が適用となっています。
9月に入って、骨折したところにばい菌が入って化膿し、足が次第に腐ってきていると言いだしました。整形外科医は、絶対にそんなことはないと説明しても全く納得しません。
そのうちに、自分が留守をしているうちにだれかが自宅に侵入し、預金通帳と印鑑を盗み出し、預金がほとんど引き出されたと警察へ訴えたりするなどのことがあり、妻や兄に付き添われて精神科を受診しました。
妄想が著明だということで、入院を勧められましたが、「もう会社はくびになっている。健康保険証も使えないし、金もないから入院もできない。」と本人は言いますが、家族の同意と医師の説得で入院となり、治療を受けることになりました。
その後、妻と兄は、職場でのけがの後、このような精神症状が現れたので、この病気も労働災害として認められないかともいっています。
考察
―この精神症状の診断は何か―
本人の主な症状は、自分の預金が盗まれたという被害妄想、自分の足が腐ってきたという病気ではないのにそうだと思い込む心気妄想といわれるもの。