一つの問題点として、業務過重をストレスと置き換えた時に、ストレス耐性というか、ストレスに対する反応は個人差の大きいものです。同じ状況に遭遇して、全ての人が同じストレス状態を引き起こすということはあり得ないわけですから、そういってしまうとほとんどが、本人の素因に関係するということで、労働災害と認定されなくなってしまいます。認定上は他との比較でなく、その本人にとってどうであったかと考えていくのが原則ともいえましょう。
それから、前にもいいましたが、ここではメンタルヘルス対策そのものではないので、労働災害として認定する上での原則除外項目を挙げておきました。簡単にいえば、本人の素因のウエイトが大きいもの、職場外でのストレス要因が大きいものということになりますが、これもあくまでも原則ではあります。
実際に認定業務を行うに際しての事実の調査というのは、極めて繁雑で難しいことが多いのです。
どんな点に留意して、どういったことを調査するのかということはここではふれませんが、一言でいえば、どう客観的に事情を明らかにできるかということにつきるでしょう。
医師の診療を受けている場合には、その医師の判断が大きな助けになりますが、それも実際には単純なことではありません。第2巻で述べた二次介入、三次介入とも一部関係することです。
最初に説明したように、認定の基準が作られましたが、これを、自殺や精神疾患等の救済策と考えるのではなく、裏を返せば、そういう事故を起こさないためにはどうするかという予防のためなのだと考えて欲しいと思います。
そうしますと、やはりここでもカウンセリング・マインドということを踏まえての対応ともいえるのではないでしょうか。
別のいい方をすれば、メンタルヘルス対応をきちんとしておけば、このような不幸な災害が起こることをかなり防げるのではないかとも考えられます。