そうやって感情の交流をすることによって、より突っ込んだ話し合いが持てれば、本当の原因が何であるかがつかめるはずです。
援助体制としては、本人が腹を割って話がしやすいと思われる同期や同僚に話し相手になってくれるように上司から頼んでみるのもいいです。本人が誰と親しいのかを分かっているような上司でしたらすばらしいです。また、直属の上司だけが相談相手ではうまくいかないこともあります。上司は必ずしも一人だけではありません。その上の上司や前の職場の上司もいるはずです。
また、上司自身が、銀行の中でこういう問題に相談に乗ってくれる人(企業内保険スタッフ…産業医、専門カウンセラー、衛生管理者)に話してどういう対応をしたらいいかアドバイスを得ることも必要です。
2] つぎに「適応力不足への援助」が大事になる
Aさんは、自分の考えで仕事を推し進めるところが強すぎて、周りの理解やサポートを得ることがうまくできていませんでした。相談相手がだれもいないので、いったん問題が起こると乗り越えにくいタイプです。エリートのひ弱さも感じられます。本人は前の職場の上司とはうまくいっていたといいますが、実際はどうだったでしょうか。人数が少なく成果も上がっていたので、そう思えたのかもしれません。
また、本人が成績を上げるために個人の生活の部分を犠牲にしてきたことは、この銀行自体の体質の問題もあったでしょうが、そういった過剰適応をしてきたのは、適応力不足の裏返しだったのではないでしょうか。こういった面を気付かせるような話し合いが必要になります。適応(環境にうまく調和できる)するためには、対人関係が大きくものを言います。これからも新たな人間関係を求められる場面は起こりますから、今度のような問題を乗り越えることができれば、Aさんの適応力は高まるでしょう。環境が激変する中、このようなケースは増えることは間違いないので、これからの上司には、「部下が変化に適応するように助けること」が一層に求められるでしよう。