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ところが、間もなくこの室長は他の部署の管理責任者に昇進することになりました。室長の上司であった次長が、今回のことが汚点にならないようにと動いたためというのが、社内のもっぱらの噂であったといいます。

 

「上司に体調だけでなく生活まで狂わされた部下の悩みは続く」

Tさんは、自ら希望して異動をすることにしました。「まったく新しい仕事に変わりました。通勤時間は倍近くなって体力的にはきついけれど、今度の職場の上司は理解を示してくれるので、今は、何とか早く慣れて期待にも沿いたいという気持ちでいます。しかし、次長や室長に自分だけでなく優秀な若手までの人生が変えられてしまったという無念さは今でも決して忘れることはできません。昇進のことも、2年も足踏みしてしまうとそこでストップしてしまうだけでなく降格もあるというのが最近の会社の方針ですから、自分の将来や今後の生活のことが気になっています」と話しました。

周りからは「明るくなったね」と声をかけられるというTさんですが、湿疹や不眠のストレス症状はまだ続いているといいます。

今後各職場で、賃金がコストである以上は刺激的な賃金制度を導入して差をつけていくのは当然という考え方はさらに高まるでしょう。そのことによって、一部にモラルダウンの人が出たとしても、トータルでよくなればいいのではないかといった声を多く聞きますが、Tさんの訴えたような問題を起こさないために、管理者(評価者)としての資質を問う事前のチェックも必要でしょう。また、部下が自分の評価に納得することができるような上下の話し合いが行われることがモラルダウンを防ぐポイントになるでしょう。

 

ケース3 うつ状態に陥った人への職場でできるサポート

私たちはストレスの中で生活しているから、だれでもアクシデントやかげりはあります。

 

 

 

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