(図の解説)A理想の自己と現実の自己との重なりが少ない状態
B現実の自己を認識して、頑張ったり、あきらめたりして、重なりが大きくなった状態。
日本の心理学者、平木典子は、自著「カウンセリングの話・増補」のなかで、この自己一致について次のように説明しています。
「自己一致とは、理想と現実の自己が一致することではなくて、一致していないことをありのまま認めて、受け入れるということです。別の言い方をするならば、現実の自己の姿を理想に近づけようとする一方、現実の自己に理想の自己を引き戻すということです。つまり、あきらめ、妥協する時安定が得られることもあれば、頑張って努力したときに得られる安らぎもあります。その両方の作業をしている自分を知っていること、そしてそれをそのまま受け入れていること、それがまさに、一致であり、ジェニュインなのです。自分のやりたいと思ったことができることの中に感じられる充実感と同時に、自分に不可能なことをやらないと決断することで得られるさっぱりした気持ち、それは対人関係の中で特に重要になってくる」と述べています。
イ 無条件の受容(unconditional positive regard)
二つ目は、無条件の受容という言葉です。この言葉は後年、肯定的配慮という、より積極的要素の強い言葉に置き換わります。しかしいずれにしろ、一人の人間として、別な一人の人間にあからさまに好意を表して接することとあります。つまりこのあからさまにということは、その人を批判したり裁いたりせずに、その人のありのままの姿をそのまま無条件で受け入れるということです。