というものです。こうした人間観を持つ人は、部下や他人への対応が監視的・命令的になるのを免れません。
一方、Y理論とは、「人間信頼論」です。
・人間が仕事で心身を使うのは人間性に基づいている
・人間は、自分で決定した目標達成のためには、進んで努力する
・人間は、条件次第では自ら責任をとろうとする
・大抵の人間は、仕事の問題解決のために高度の想像力を発揮したり、創意工夫する能力をもっている
というものです。「人間は本性的に遊びに熱中するのと同じように仕事に熱中するものである。したがってその意欲が自然に発揮できるような状況に人間を置くことが大切である」と述べました。マグレガーは、以上のような見地から、これまでの従業員に対する経営者の伝統的な先入観をX理論とし、これからの近代的人事管理はY理論に基づくべきであるとする新しい人間観を提示しました。
イ D心理学とB心理学
上記マグレガーの師であり、ヒューマニスティック・サイコロジーの旗手と言われるアメリカの心理学者マズロー(Maslow, A.H.)は、より人間性を重視した理論を打ち立てました。彼は「人間は生まれながらにして、より成長しよう、自分の持てるものを最高に発揮しようという動機づけを持つ存在である」としました。彼の理論によれば、心理学には二種類の心理学があり、一つはDeficiencv「欠乏」の心理学であり、もう一つは、Being「人間存在」の心理学であるとしました。
つまりこれまでのD心理学においては、「人間の足りないところや欠けたところに焦点を当てて、人間に何が不足するとどんな障害が起きるか」ということの研究がなされてきました。