カウンセリング理論には、主なものに精神分析理論(精神分析)・行動主義理論(行動療法)・自己理論(来談者中心療法)・交流分析・ゲシュタルト療法などがありますが、これらの理論については、一つの理論だけにとらわれず自分の仕事に有用である程度に学んでおけば良いように思われます。最近では一つの理論に固定せずに使えるものは何でも使おうではないかという折衷主義という考え方がなじみのあるものになってきました。この折衷主義的アプローチには2つの型があって、一つはアレン・アイビィのマイクロ・カウンセリングで「どういう時にどういう人にどういう方法が適しているかを考えよ」という既存の理論を状況に応じて使い分ける選択主義的方法で、もう一つはロバート・カーカフとアルバート・エリスの既存の諸理論・諸技法を一つにまとめあげる統合主義的方法です。エリスは論理療法として認知(ビリーフ)の修正に焦点を合わせて統合し、カーカフはアクションを起こすことに重点を置いています。カーカフはカウンセリング心理学出身で、カウンセリングは心理療法というよりも日常生活の人間関係に活用されるべきだという考え方を持ち、ヘルピングという概念を提唱しています。ヘルパーとヘルピーはカウンセラーと相談者のように役割が固定された関係ではなく、逆になることもある関係としているのです。
カウンセリング・マインドの考え方は、この折衷主義的考え方と似ています。カウンセリングもカウンセリング・マインドも最終的に目指すのは「行動の変容」つまり問題の解決にあるのです。
(5) 職場におけるカウンセリング・マインド
職場におけるカウンセリング・マインドとは、主に監督者と部下の職員との関係です。今日では職場が活性化し、能率を向上させるためには、従来のリーダー・シップ論だけでなく監督者がカウンセリング・マインドをもって部下が働きやすいように配慮することが絶対条件になってきています。