1 カウンセリング・マインドの必要性
(1) カウンセリング・マインドとは?
カウンセリング・マインドという言葉は、いわゆる和製英語なので、はっきりとした定義付けがしにくいのですが、一般的には「カウンセリング的な考え方や手法を日常生活に活かしていくこと」を意味することが多いようです。
ここではまず「カウンセリングとは何か?」という点について簡単に説明しておきます。
人間は職場や学校、あるいは家庭などで様々な問題にぶつかります。生きていく上ではいろいろな悩みや課題も出てきます。こうした悩みや問題を解決し、よりよい生活を送るための相談がカウンセリングというものです。カウンセラーの側から言えば、「問題解決の援助」「自立への手助け」「自己実現の支援」などを行うのがカウンセリングということになります。
カウンセリングという言葉は、本来非常に広い意味を持ちますので、その中には、様々な理論や手法があるのですが、それらのうちで多くの人の支持を得ているものの一つとして、「はじめに」でも紹介したロジャーズが提唱した「来談者中心カウンセリング」の理論をベースとして説明をしていきます。
この理論の背景には、ある哲学的な考え方が存在しています。それは、人間一人一人を尊重する精神、お互いを理解し受け入れる精神、そして、「人はみな自分で問題を解決していける成長力をもっている」という人間への信頼感です。こうした考え方や人間観をバックボーンとして、その理論と手法は成り立っています。
では、具体的にどのような手法でカウンセリングは行われているのか。それは、「相手の話をよく聴く」ということが基本となっています。相手の話をよく聴き、共感的な態度で相手のことを理解するようにつとめ、それによって良好な人間関係や信頼関係を作っていく。その信頼関係ができたあとで、よりよい生き方をするための様々な援助が行われるのです。