松島音頭 (詩・北原白秋)
松(まつ)は松(まつ)しま
磯馴(そなれ)の松(まつ)の
松(まつ)のねかたに、桔梗(ききやう)が咲(さ)いた。
見(み)たよ、見(み)ました、
一(ひと)もと桔梗(ききやう)。
や、ほうれ、ほうい
舟(ふな)ばたたゝいて
や、ほうれ、ほうい。
さんささんさは
ありや松(まつ)かぜよ、
誰(たれ)をまつやら、桔梗(ききやう)が咲(さ)いた。
見(み)たよ、見(み)ました、
一(ひと)もと桔梗(ききやう)。
や、ほうれ、ほうい
舟(ふな)ばたたゝいて
や、ほうれ、ほうい。
ここは松(まつ)しま、
雄嶋(をしま)が崎(さき)よ、
星(ほし)のちろりに桔梗(ききやう)が咲(さ)いた。
見(み)たよ、見(み)ました、
一(ひと)もと桔梗(ききやう)。
や、ほうれ、ほうい
舟(ふな)ばたたゝいて
や、ほうれ、ほうい。
さんささんさで
待(ま)つ身(み)はさぞや、
露(つゆ)の夜露(よつゆ)に桔梗(ききやう)が咲(さ)いた。
見(み)たよ、見(み)ました、
一(ひと)もと桔梗(ききやう)。
や、ほうれ、ほうい
舟(ふな)ばたたゝいて
や、ほうれ、ほうい。
はやせ、はやせや、
松嶋音頭(まつしまおんど)、
松(まつ)のねかたに桔梗(ききやう)が咲(さ)いた。
見(み)たよ、見(み)ました、
一(ひと)もと桔梗(ききやう)。
や、ほうれ、ほい
舟(ふな)ばたたゝいて
や、ほうれ、ほい。
南天の花 (詩・永井隆)
南天の花咲きぬ
ひそかに咲きぬ
おもかげはかなしかるもの
この花のしずけさに似て
焼跡にふたたび生きて
南天の花は咲きぬ
南天の花散りぬ
ひそかに散りぬ
おもかげはほのかなるもの
この花のはかなさに似て
焼跡にわれのみ生きて
南天の花に泣きぬ
薔薇の花に心をこめて (詩・大木惇夫)
薔薇よ薔薇
薔薇の花ささげまつる
地の上に香りて浄く
いと美わしき花なれば
薔薇よ薔薇
大空の御光ありて
薔薇よ薔薇
薔薇の花ささげまつる。