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かやの木山(きやま)の (詩・北原白秋)

 

かやの木山(きやま)の

かやの実(み)は、

いつかこぼれて、

ひろはれて。

 

山家(やまが)のお婆(ば)さは

ゐろり端(ばた)、

粗朶(そだ)たき、柴(しば)たき、

燈(あかり)つけ。

 

かやの実(み)、かやの実(み)、

それ、爆(は)ぜた。

今夜(こんや)も雨(あめ)だろ、

もう寝(ね)よよ。

 

お猿(さる)が啼(な)くだで

早(は)よお眠(ね)よ。

 

鐘が鳴ります (詩・北原白秋)

 

鐘(かね)が

鳴(な)ります、

かやの木山(きやま)に。

 

山(やま)は

寒空(さむぞら)、

遠茜(とほあかね)。

 

一(ひと)つ星(ぼし)さへ

ちらつくものを

 

なぜに

ちらりとも、

出(で)て見(み)えぬ。

 

六騎 (詩・北原白秋)

 

御正忌参詣(しやうきめえ)らんかん、

情人(ヤネ)が髪結ふて待(ま)つとるばん。

 

御正忌参詣(めえ)らんかん、

寺の夜(よ)あけの細道(ほそみち)に。

 

鐘が鳴る鐘が鳴る。

逢うて泣けとの鐘が鳴る。

 

砂山(すなやま) (詩・北原白秋)

 

海(うみ)は荒海(あらうみ)、

向(むこ)うは佐渡(さど)よ。

すずめ啼(な)け啼(な)け、もう日(ひ)はくれた。

みんな呼(よ)べ呼(よ)べ、お星(ほし)さま出(で)たぞ。

 

暮(く)れりや、砂山(すなやま)、

汐鳴(しほな)りばかり、すずめちりぢり、また風荒(かぜあ)れる。

みんなちりぢり、もう誰(だれ)も見(み)えぬ。

 

かへろかへろよ、

茱萸原(ぐみはら)わけて、

すずめさよなら、さよなら、あした。

海(うみ)よさよなら、さよなら、あした。

 

 

 

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