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―実践報告―

岐阜県からまいりましたファミリーユニット童鼓です。知的障害をもつ子ども達と、その親・兄弟で成り立っています。

私達と和太鼓との出会い、それは平成6年10月のことです。高知県光の村養護学校の体育祭を見学させていただいた時のことです。澄んだ青空のもと、打ち鳴らされた黒潮太鼓を見聴きし、今まで経験したことのない、とても言葉では言い尽くすことのできない驚きと感動を覚えました。その感動は、私達の子ども達にも、太鼓をたたかせてやりたいという思いとなり、平成8年10月に、ファミリーユニット童鼓の結成となりました。しかし、和太鼓が特に盛んという地域性もなく、まして、知的に遅れがある子ども達への知識もある太鼓の指導者を捜すてだてはありませんでした。

 そこで、親がまず習い、それを伝えていこうということになりました。地元の保存会に入会し、学んだことを全て伝えるという方法で、練習をはじめることになりました。子ども達が太鼓に魅せられ、目が輝いている姿は、すぐに感じとれました。その思いを受けとめ、このやり方で良いのか、もっと良い方法があるのではないかと思うと、いきづまりの連続でした。今まで続けてこれたのは、子ども達の太鼓をたたく時の笑顔と、そして私達も驚くほどのまわりの多くの方々が応援して下さるようになっていったおかげである、と思っています。

何といっても、成長期の子ども達のことですから、いろんなことがおきてきます。反抗期をむかえたのか、練習中に寝そべってしまい、『がんばろう。』と声をかけても聞けず、『皆の迷惑になるから、寝そべっているのなら、へやのすみの方でなさい。』としかられ、泣きだしてしまう子、親達はいつも、自分の子どもも他の子どもも関係なく声をかけあうので、こんなふうに泣きだされてしまうと、内心、だいじょうぶかなと心配になることもあります。しかし、どんなに障害が重い子どもでも、何でしかられたのかよくわかるし、大好きな太鼓のため、そんなことでめげる子どもはいません。

兄弟達は、いろいろな形で参加をしています。自分も太鼓をたたきたくて、ひたすらたたく子、年齢があがって気持ちの変化がおきて少し休みする子、太鼓はたたかないけれど、練習日にはきて小さい妹弟のめんどうをみたり、手伝ってくれる子。年上の子ども達は太鼓の練習日にくることはありませんが理解をしてくれています。久しぶりにイベントで童鼓の演奏を聞いて、『胸があつくなった。妹達はすごいよ。』と、母に語る子。そんな時、やってこれてよかったと、親としてしあわせな気持ちになります。

練習をはじめて4年目にはいりました。子ども達の変わらぬ笑顔、成長はもちろんのこと、この子らを中心として、多くの理解者の輪が少しずつふくらんできていることを実感できる今の童鼓です。皆の人生がより豊かなものになるよう、少しでも長く太鼓をたたき続けることができたらと願っています。そのためにも、この様な発表の機会を毎年与えていただけることを希望致しております。また、指導者のための研修会なども開催していただけると、この大会は指導する側される側2者にとって大変ありがたいものになると思います。

 

 

 

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