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―実践報告―

私が太鼓を始めたのは、友人に『一緒にどうか』と誘われ『自分にできるのか』と心配でしたが、地元の太鼓保存会の練習を見学をしたのがきっかけでした。体に感じる響きがいいと思い、楽しそう、打ってみたいという気持ちが沸いてきました。耳の聞こえない者にとっては音階のあるピアノやラッパ・ギター等の楽器に強くひかれるものがあったのです。それから、8年余り保存会で練習を重ね、その後、県聴力障害者協会の創立記念大会のアトラクションとして、披露をしたのです。1回だけではもったいないという声があり、同じ障害を持つ者とボランティアで、現在の太鼓を結成しました。耳の聞こえない者にとっては、リズム感をつかむことはとても難しく、大変な時間が必要でした。模造紙に音階を書いたり、大小のマルで強弱を、左右は線の上下で区別を工夫しながら、お互いのバチの動きを確認し、音を合わせていったのです。難しいと思うことばかりでしたが、メンバーの熱意に支えられ、週1回の練習を重ね曲のレパートリーも、少しづつ増やしていきました。振り返ってみれば、ろくな太鼓もないダンボールの太鼓からのスタートだったのが、自費で太鼓の購入等いろいろ頑張ったものだなあと自分達のことながら思います。

私達の活動も多くの方々に知っていただけるようになりました。子供の福祉教室や小・中学校へ招かれるようになり、子供達にとっては、障害者との初めての出会いであったり、お互いに理解を深めるきっかけになっているようです。私達も、『目的をもってチャレンジし続けてほしい』というメッセージを伝えるチャンスに恵まれています。逆に子供達の声も、私達を後押ししてくれる力にもなっています。老人ホームや福祉施設にも出掛けてゆき、おじいちゃんやおばあちゃんに大変喜ばれ、私達もとても感激しているところです。

また、阪神大震災鎮魂・広島原爆慰霊太鼓にも参加し、少しでも何かの形でお役に立ちたいと考えています。地元の祭にも毎年参加して、全ての人々が平等に楽しむことにも積極的につとめています。養護学校の太鼓クラブとも交流を深め、ステージ発表等の企画・出演にも力を入れています。

結成以来、『より多くの人々に見て、聴いてもらおう!』を合言葉に走り続けてまいりました。歩みはわずかかもしれません。でも、私達の思いは定着しつつあると思っています。それに、私達を取り巻く環境も変化をしてまいりました。それと同時にメンバーの構成や関わり方も変化しています。参加メンバーも年齢の幅が広くなり、耳の不自由な小学生の参加もあります。交流の深まりは目では見えない進歩があるのではないでしようか。今年からは耳の障害ではない仲間を迎え、もうひとつ上へ向け新曲へのチャレンジも進められています。太鼓を表現手段としてではなく、伝統芸能の継承という考え方も含め、より一層の技術向上を目指して頑張りたいと思っています。

昨年の全国大会への参加は、大変な刺激となりました。多くの仲間がそれぞれの立場で活躍する様子を知り、喜ばしく、私達もという気持ちになります。今回、いろいろな方面の方々にご支援いただき新しい太鼓運搬車両が購入できることになりました。経済的に苦しく問題の種も解決し、心も新たに頑張っていきたいと思います。今まで応援して下さった方々に感謝の気持ちを忘れることなくメンバー心合わせ、太鼓を純粋に楽しみ、多くの方々との出逢いを大切に、活動の場を広げていきます。

 

 

 

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