―実践報告―
大阪から来ました豊中ろう和太鼓クラブ『鼓響』代表の吉本と申します。
5分間の成果発表という事ですが、何から話せばよいのか戸惑っています。
まずは『鼓響』という名前の由来から説明させて頂きます。太鼓の響きが音として体に伝わるという意味でつけました。耳の聞こえない私たちにとって音楽とは学校の授業のひとつであり、行事として開かれるミニ音楽発表会で演奏するなど、それもほとんど先生のまねをするだけで意味などわからずに終わっていました。
音楽を楽しむことなど頭にはなく、別世界の全然関係のないものだと思っている方もまだまだたくさんいらっしゃるかと思われます。
私も3年前まではそう思っていました。
しかし、太鼓に出会えてからは考え方が変わりました。
太鼓の音は確実に体に伝わってきます。その響きを互いに合わせる事は非常に難しい事ですが、目バチの動きを追いながら体と口でリズムをとるという方法で練習しています。
同じリズムを何回も何十回、そして何百回と繰り返し練習するのです。
それでもお互いのリズムが合うのは、そのうちの数回です。練習は厳しいです。
汗びっしょりになり、体はクタクタになるまでたたき続けているのに、それでも中々出来なくて悔しくて涙が流れる時もあります。
それでも私たちは太鼓をたたいています。
和太鼓から出る音やリズムは人々の心に故郷(ふるさと)をなつかしく思ったり、感動をあたえます。
これは人間の心臓の鼓動と似ているからだといわれていますがそれだけではなく、私たちに音を教えてくれたのが太鼓であり音楽の楽しさをわからせてくれた原点だがらだと言えます。
私個人の意見になりますが、夢中になれる何かを見つけたいと思っていた時、ろうの先輩から『太鼓をやってみないか?』と声をかけられました。太鼓の事など何ひとつ知らないのに『やってみる!』と即座に返事をしていました。
今から考えるとなぜそう言ったのか不思議に思うのですが… 苦しい事・つらかった事・そして耳が聞こえないからとくやしい思いも数え切れないくらい味わいましたが、太鼓をたたいているとイヤな事が全部ふっ飛んでいきます。
反対に頑張れ、頑張れと元気づけてくれます。和太鼓にはすごいパワーがあるのですよ。
『鼓響』は毎週木曜日と第1・第3土曜日に豊中の福祉センター『ひまわり』で練習をしています。
メンバーは男性6人・女性6人です。
公演回数は年間平均15回ぐらいで、小学校・中学校からの依頼をはじめ、琴の発表会・会社の創立記念パーティーや福祉関係、めずらしい所ではお寺の落成法要など色々あります。
ありがたい事に、どこから聞かれるのか人から人へと『鼓響』の事が伝わり依頼に結びついています。
私たちのクラブはまだまだこれからです。このクラブをどう発展させていくかは、現在のメンバー12人の情熱にかかっています。
ファミリー的なあたたかい雰囲気のクラブづくりを大切にしながら、一人でも多くの方の心に響くよう、命の太鼓をそして心の音を聞いてほしいと思っています。