何かしてあげなければという気持ちで、安易なアドバイスや他機関紹介をしてしまったり、研修を積んで特別の知識を得たことから、賢(さか)しらに自説を押しつけてしまう愚挙を戒め、上でもなく下でもなく被害者の傍らにそっと寄り添えるような心の持ちようをめざすべきなのだなあと、私はそんなことをしみじみ思いました。
それでもやはり、「被害に遭われた方は本当にお気の毒だなあ」という素朴な感情こそが、私たち一人ひとりが被害者支援の活動に参加する際の発端であり、原動力であることも否めません。たまたま被害に遭った隣人に対して自然に沸き上がる感情を大切にしながら、なおかつその感情のままに先走ることなく、被害者と共に歩むことができるようになりたいものと思います。
相談電話を受けて
「電話相談を受けて」
談員 O.Mさん
設立当初より相談電話に携わってきましたが相談内容は千差万別です。
この電話に救いを求めてこられるお気持ちは分かりますが、よくお聞きしますと、「あらゆる所へ相談したが自分の主張が通らなかった、だからここで何とかしてほしい、このセンターで認めてくれたという印がほしい」という内容のものもあります。
事件、の被害者とはっきりしている場合は、相談を受けるにも研修で学んだことを持って、対応すれば良いのですが、果たしてこのセンターで扱うことなのか、本人のわがままからなのかどうか、判断に迷うことも多々あります。更なる研修が自分自身に必要なことを痛感いたします。
その中で本来の被害に遭われた方の心を心として、共に歩んで行けたらと願いつつ精一杯関わっていきたいと思います。
「電話相談を受けて」
相談員 M.Uさん
平成十一年六月から相談電話に携わるようになり、今日まで幾つかの相談を受けました。
まだまだ相談件数は多くありませんが、電話のベルが鳴るたびに緊張します。
私が受けた相談内容は、「身内の事故の扱いに対する警察への不信感、隣近所とのトラブル、交通事故処理に関する相談窓口への紹介」等々と多彩です。
かけてくる相談者も緊張や混乱から、こちらに相談内容が何なのか正確に伝わってこない場合もあります。
まず先方のお話をじっくり聞き、何を相談しようとしているのかを掴み、その後の対応を考えつつ、時に「○○といった事を知りたいのですか?」と相手に問いながら、被害に遭われた方の心の痛みや苦しみが少しでも癒されたら、…という気持ちで対応をしています。
昨今、核家族化が進み、さらに人心の荒廃化も考えられ、相談事も複雑多岐に渡り、件数も増大することが予想されます。
いずれ長野にも被害者の方達の心の拠所ができて、気楽に安心して相談できる窓口や、体制の拡大が出来れば、またセンターがその足掛かりになればいいと思います。そしてやがて被害者の方が英国、米国等にも引けをとらないサービスを受けられるようになることを願います。
いつ、誰もが被害者になる可能性のあるこの時代に、自分なりに精一杯かかわっていきたいと思います。
全国の民間支援組織の活動
事務局 玉木一成
昨年新たに(社団法人)被害者支援都民センター、福岡犯罪被害者支援センター、犯罪被害者支援センターみやぎ、おうみ犯罪被害者支援センター、ハートラインやまぐちの五つの新しい被害者支援センターが全国組織「全国犯罪被害者支援ネットワーク」の仲間入りをしました。
被害者支援活動にとり昨年は画期的な一年であったといえます。折から多発する少年犯罪は、「少年犯罪の凶悪化」が注目され「加害少年の人権」が強く叫ばれる一方、被害者遺族は「被害者家族への基本的人権への配慮を欠いた」少年法・少年審判・刑事訴訟法の改正を政府に強く求めました。法務省は世論に押される形で、ようやくその重い腰を挙げ法整備に向けて各種公聴会を開催し、関係法律の改正を図りました。多くの犠牲者の上に法整備が図られるという現実には、強い憤りを禁じえません。「被害者基本法」「被害者保護法」の骨格を成す法律の整備が一歩前進したといえます。
しかし、総理府の行った世論調査によると犯罪被害者に対する国の支援・保護・救済に「充分」だと答えた人は九.三%に過ぎず「不十分」だと答えた人は七十五.九%を占めています。警察庁が昨年実施した被害者への調査でも、カウンセリング等の精神的な支援・弁護士の紹介・相談相手になってもらうこと・身の安全を守っで貰う事などが求められていることが分かりました。
また、児童虐待、ストーカー犯罪など、支援者の側にも質的な変化が求められています。カウンセリングにとどまらず、直接的な保護や予防措置が重要となってきています。
