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No.3

長野犯罪被害者支援センターだより

 

発行/平成13年3月31日

発行責任者/筒井健雄

発行所/長野犯罪被害者支援センター事務局

電話/FAX 026-223-7848

 

二十一世紀を生きる

長野犯罪被害者支援センター

会長 筒井健雄

 

激動の世紀であった二十世紀を生きてきたわれわれは、今年二十一世紀の初めの一年を今まさに生きつつあります。二十一世紀が物理学の大改革に始まる「物質の世紀」であったとすれば、二十一世紀は心理学の大改革に始まる「人間の世紀」と言えることでしょう。ボランティアの人々を先頭とする犯罪被害者支援の運動も二十一世紀という「人間の世紀」に入ってますます活発化してゆくことでしょう。

二十世紀が何故激動の世紀であったのかというと、それはまさに物質の世界を人間の欲望充足に適合するように支配し、コントロールして、人間が生きやすいようにしようとしたことに深く関係します。ルネッサンス以降魂の問題は宗教が担当し、物質の問題は科学が担当するという宗教と科学の専門家(棲み分け)が進みました。

科学技術を駆使して人々は乗り物を発展させ、衣類を大量生産し市場経済を発展させました。資源獲得と市場拡大のために、科学を先に発展させた西欧諸国はアジアやアフリカなどの多くの国々を植民地化しました。

より豊かに、より大きく、より強くということが、あらゆる時代の人々の願望でしたが、二十世紀は科学技術を背景とした国家間の競争によっていっそう過酷なまでに競争が激化されました。国家間の競争は利害の衝突を招くことになります。そこには緊張が発生し、その高まりに末に戦争という方法で解決がなされてきました。強大な兵器を追求する試みは遂に原爆、水爆という最終兵器とその運搬手段であるミサイルまで生み出しました。

この間宗教は崇高な見えざる絶対者「神」を信じ、その意思を探ろうとしましたが、うまく行きませんでした。二十世紀を通じて科学と宗教の間に矛盾が高まり、緊張が深まってまいりました。これがスペインの哲学者オルテガの言った「現代の危機」でした。

十九世紀の末頃から始まり、先駆者によって気付かれ警告が発せられていた「現代の危機」は、最近ようやく解決される見通しがついてきました。それは価格中立の古い科学を脱却し、人間の心あるいは魂の成長を計ることのできる、「新しい科学」を発展させ、普及させるとこによって可能であるという見通しです。より豊かになろうとした進歩と競争の二十世紀には、進歩の裏で汚染物質による環境破壊が進みました。他人との競争激化から不正な手段を使っても優越しようとする人々も増え、不信感も広がりました。

不信感から家族や学校や地域社会のような共同体を破壊しようとする行動もしばしば見られるようになってきました。共同体の破壊がさらに進むと人間らしい感情も失われます。こうした現象は最近問題になっている少年非行での非人間的で冷酷な殺傷事件にも見られます。

犯罪被害者を救う支援活動は事件発生後の治療的活動に止まらず、その発生源を消滅させる予防的運動を伴う必要があります。そのためには人々の人格を高め、共同体を成長させなければなりません。話の聴き方の学習や研修は自分自身の内部の声を軽視したり無視したりせずに、大切にすること。その声を正しく理解し、日常生活に活かすことから始まります。フォーカシングや内観法、あるいは座禅を正しく実習すると身体や心が清々しくなります。病気にかかり難くなり、人のいざこざも起こり難くなります。生まれてきて良かったと思える人、周りの事物に感謝できる人が、己を無にして話しに耳を傾けてくれるときに、悩める人も自分の本心に耳を傾けることができるようになります。

こうした心の平安と共同体は小さなものですが、この小さな一歩を無数に増やすことによって、大きな共同体へと成長させることができます。二十一世紀を生きるということはこうした小さな一歩を着実に歩み、またそれをひろげることにあるのではないでしょうか。

 

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