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被害者には時効が無い

犯罪被害者支援センターみやぎ

運営委員 田中峪メ

 

宮城県被害者支援連絡協議会が、民間の支援センター設立を目指して準備を始めた時から、その動きに関わることになり、これまで殆ど知らずにいた犯罪被害者の状況が少しずつ見えてきました。

社会的にも関心が高まり、新聞やテレビでも関連する情報を眼にすることが多くなり、少しはわかってきたように思っていました。しかし「犯罪被害者支援センターみやぎ」の設立記念講演で、大久保恵美子さんが「犯罪被害者の現状と必要な支援」と題して話されたのを伺った時、突然「被害者」となった家族の深い傷と苦しみ、悲しさ、やり切れなさ、憤りとそれに耐えている姿に圧倒され、その背負った荷物の重さは、はかり知れないことに気づいたのです。

関係者や周囲の人々からのいくつもの不条理な対応に傷つき、もう何も云いたくない、人の目にふれたくない、という思いになられたのも無理のないことと思われました。

その大久保さんが「被害者を精神的に救う道をつくって下さい」と声を上げ被害者支援活動の糸口をつくり、自助グループを結成し同じ痛みを持つ者同士で支え合い、多くの人に被害者の心を知ってもらう為に使命感をもって話をなさっていることは簡単に出来ることではなかったでしょう。

加害者には時効がありますが、被害者には無いのです、との言葉が心に残りました。

交流会でお会いした時、「とても辛いことでしょうに勇気を出してお話下さって本当にありがとうございました。」と申し上げるしか言葉がありませんでした。

支援センターでの相談活動が、いよいよ五月に始められました。掛かってくる電話は今のところそう多くはありませんが、今まで誰にも云えずに一人で思い悩み、苦しい気持を抱えてきた方が、この電話があることを知ってくれたら、と願いながら待っている状況です。

被害を受けた人が、暗雲のたれ込めたような日々を、息をつめるようにしてくらしているところから、少しでも陽の光をみつけ、ほっとする時間に出会えるように、お手伝いできれば嬉しいのですが……。

活動を始めるにあたっては、いくつかの研修を受けてはいるものの、相談される方に寄り添って、必要な援助が出来るようになるためには、まだまだこれから、の感を深くしているところです。

 

 

 

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