我が国の犯罪被害者は、生命身体等に重大な侵害を受けた事件の重要な当事者でありながら、長い間刑事司法制度からも社会からも「忘れられた存在」であった。多くの犯罪被害者は、我が国の犯罪被害者支援の充実を願いながらも、声をあげることさえ出来ず、苦しんできた。
犯罪は社会の規範に反し、人間の基本的な権利を侵害するものであり、また誰もが犯罪被害者となりうる。それゆえに、犯罪被害者を理解と配慮をもって支援し、その回復を助けることは、本来、社会の当然の責務である。
犯罪被害者が大きな打撃から立ち直り、人間としての幸福を求めて再び歩み始められるように、犯罪被害者の権利を確立することは、単に福祉の増進にとって必要であるばかりでなく、国民の刑事司法に対する信頼を高め、社会全体の利益につながるものである。
国、地方公共団体は、被害者支援のための総合的な施策を講ずる責務を担うべきである。また、国民は、犯罪被害者のおかれている状況を理解し、支援に協力することが求められる。
全国被害者支援ネットワークは、このような認識に立ち、ここに以下の犯罪被害者の権利を宣言する。
(公正な処遇を受ける権利)
1. 犯罪被害者(犯罪によって害を被った者及びその家族をいう。以下同じ。)は、公正で、かつ個人の尊厳に配慮した処遇を受けるべきである。
(情報を提供される権利)
2. 犯罪被害者は、被害を受けた事件の刑事司法手続きおよび保護手続きに関する情報、ならびに被害の回復のために利用できる諸制度に関する情報の提供を受けることができる。
(被害回復の権利)
3. 犯罪被害者は、受けた被害について迅速かつ適切な回復を求めることができる。
(意見を述べる権利)
4. 犯罪被害者は、刑事司法手続きおよび保護手続きの中で、意見を述べることができる。
(支援を受ける権利)
5. 犯罪被害者は、医療的、経済的、精神的及びその他の社会生活上の支援を受けることができる。
(再被害からまもられる権利)
6. 犯罪被害者は、再被害の脅威からまもられるべきである。
(平穏かつ安全に生活する権利)
7. 犯罪被害者は被害を受けたことからおこるプライバシーの侵害からまもられ、平穏かつ安全な生活を保障されるべきである。