第7回(3月17日) 被害の実態とトラウマケア
穴田富美子(犯罪被害者相談室)
被害者にPTSD(心的外傷後ストレス障害)が起こる事は最近まで知られておりませんでした。出来事が人為的なもの(犯罪など)であるほど重症で長引く事があるという事もわかってきました。症状としては次のようなものがあります。
再体験−事件についてのつらい夢を見る 不意にその時の光景がよみがえる
回避−事件を思い出すような話、場所、行動を避けてしまう 楽しいとか嬉しいという感情を持てなくなる 将来の希望が無くなったり小さくなったりする
過覚醒−よく眠れない イライラして集中できない 周りが気になって警戒したり身構えたりする 物音に敏感になりひどくびっくりする
その他にも、空白の時間のあとふと我に返ると見知らぬ場所にいたといった解離状態をおこす事もあります。自分自身への信頼感を喪失してしまうことも多いです。
PTSDは被害者だけでなく被害者の家族、遺族にも起こります。PTSDの症状以外にも 現実感がない 否認(信じない) 怒り 非難 復讐心 攻撃心 自責感(自分のせいでこうなった) 未完結感(断ち切られた想い) 無力感 絶望感などの心理状態に被害者遺族はおかれます。遺族のかたがよく口にされる言葉として「事件のままの時間と世間一般の時間と時間が二つある」「物事が楽しめない、楽しんではいけないように感じる」「自分のどこかが欠けたように、心がずたずたに引き裂かれたように感じる」「誰にもこの気持ちはわからない」「自分さえ気をつけてあげていたら」等があります。
実際に他人に言われてつらかった言葉として
「がんばって・元気をだして」…なぜがんばらなくてはいけないの?
「いつまでも悲しんでいないで・早く忘れなさい」…悲しんではいけないの?
「お気持ちはわかります」…この気持ちが体験しないあなたに本当にわかるわけないじゃないの?
等をあげられる遺族の方がおられます。励まそう、援助しようと思うあまりかえって相手を傷つけている言葉もあるのです。被害者の方、遺族の方に対してよく言われる言葉がどう伝わるのか、実感として感じるためのワークをしてみたいと思います。