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被害者支援セミナー 講座のまとめ

 

大阪被害者相談室では、犯罪被害者の実情をより多くの人達に知ってほしいとの願いをこめ、2000年10月から「被害者支援セミナー」を全7回のカリキュラムで開催しました。40名余りの参加者が集まって下さり、熱意溢れる講義に熱心に耳を傾けて学んで下さいました。

 

第1回(10月7日) 被害者支援の現状・被害者の心理

 

開講式と才リエンテーションの後、お二人の講師から次のようなお話を伺いました。

「被害者支援の歴史と現状と課題」 講師:山上皓 東京医科歯科大学教授

わが国における被害者支援活動の概観として、被害者支援ネットワークの現状を紹介したいと思います。現在は16都道府県(3月現在20ヶ所)でボランティア主体の活動が展開されていますが、犯罪被害に遭うことはそれまでの人生を一変させてしまいかねない影響を及ぼし、被害者はさまざまな場面で傷つけられます。現在行われているのは、主として電話相談とセルフグループの推進です。電話相談では1]被害情報の聴取2]ニーズに応じた助言とリファー3]継続的カウンセリングによるサポートが行われています。またセルフヘルプグループでは「私だけがなぜ?」という犯罪被害者の孤立感、苦しみを癒し、被害者が立ち直って行く過程を支えることができます。今後求められるのは、事件直後の被害者支援サービスです。危機介入、付添いや搬送、連絡や情報提供などですが、もっと具体的日常的な生活支援も考えられます。また家族や遺族へのより早い対応のために24時間ホットラインや証人支援サービスが必要だと言われています。

東京医科歯科大学・犯罪被害者相談室での実践を踏まえて、平成12年4月に法人化された被害者支援都民センターの活動も始まりました。今日のようなセミナーやボランティア講座の開催など、時代の要請に応えていくことも大切なことだと思います。

 

「被害者の心理」 講師:三木善彦 大阪大学大学院教授

何の落ち度もないのに子どもを犯罪被害で亡くされた遺族が、どのような苦しみを受けるのか、具体的な事例から考えていきましょう。遺族は世の中に対する信頼感が全く崩壊し、無力感・絶望感・自責感に苦しめられ、家族内の人間関係が崩壊したり、周囲の無理解から転居を強いられたりすることもあります。また被害者はこうあるべきだというようないわれのない偏見に苦しめられるのも事実です。感情や記憶の麻痺というようなPTSDに苦しめられる人は少なくありません。そのような被害者にとって、ありのままの気持ちを吐き出して聞いてくれる人がいる、分かってくれる人がいるという経験は何にも代えがたいものです。その認識を、被害者支援に関わる者は持つ必要があると思います。

 

三木先生の恒例の手品で、緊張していた会場の空気も少し和みましたので、最後にセミナー参加者に簡単な自己紹介を実施して、翌月からの本格的なセミナーに向けての意欲を相互に確認しました。

 

 

 

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