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被害者支援都民センターへの期待

相談支援部門の充実を願って

 

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被害者支援都民センター副理事長

東京医料歯科大学教授 山上皓

 

平成四年に、東京医科歯科大学に犯罪被害者相談室を開設してから、はや八年になります。遺族の方の切実な声に応え、被害者の精神的支援を目的に作られたものです。先行していたアメリカのNOVAのマニュアル等を参考にして、試行錯誤を重ねて始めた活動でしたが、この数年で大きな広がりを見せ、民間援助組織の数も全国で十七を数えるまでになりました。

法人組織としての「被害者支援都民センター」設立の構想は、東京医科歯科大学における犯罪被害者相談室の活動の中から生まれてきました。支援活動の内容を真に被害者のニーズに応えるものとするためには、さまざまな点で充実を図らなければなりません。この度の都民センターの設立によって、私たちは従来に比して、次のような点において活動内容を充実させてきております。

 

1 相談活動の充実

1] 電話相談:相談電話を三台にし、時間についても七月から、木曜日については午後七時まで延長することが出来ました。将来は、被害者の方が、昼でも夜でも、また辛いときにはいつでも電話をかけられるよう、ボランティア相談員の増員を図り、二十四時間体制で臨むことが私たちの夢です。

2] 面接相談:被害者カウンセリングの専門家を相談支援室長に迎え、継続カウンセリングを行なえる体制を整えました。複数の専門家が事例検討を通じて自ら専門性を高め、他のスタッフもともに学んで行けるようなチーム作りを目指したいと思います。

 

2 直接的支援の開始

従来の相談活動を中心とする活動では、真に支援を必要とする被害者の数パーセントにしか接することが出来ないと思われます。被害者のニーズに十分応えるには、アメリカやイギリスにおいて行われているような、早期の直接的支援の開始が必要です。

都民センターには、直接的支援専門の責任者を配置し、事件後、早期の生活支援や付き添いサービス等を実施する準備を始めました。まずは、近在の警察と連携を密にし、試験的に活動を始めています。

 

3 自助グループ活動への支援

被害者遺族の自助グループは、被害者支援の中でも特有の大切な役割を担います。経験豊かなスタッフが、本センターの自助グループ担当責任者として、周囲からの幅広い要請に応えています。

 

4 人材の育成

新しい活動を展開していくためには、人材の育成が肝要です。将来、都民センターは、東京都内に数カ所の支部を配置する必要もあり、各支部でコーディネーターとして活躍できる人材育成も急務とされます。都民センターには、そのため三人の専門家をスーパーバイザーとして迎え、スタッフならびにボランティアの教育・研修の充実を図っております。

 

5 事務局の充実

組織の拡大に伴い、幅広い広報や関連諸機関との連携、財政基盤の充実や人事管理、会計事務等、事務局の業務も重要性を増しましたが、事務局長はじめ、各スタッフが活躍しています。

全スタッフの努力により、被害者支援都民センターが、被害者遺族の方々や、本センター設立にご協力していただいた皆様の期待にしっかりと応えられるようになることを願っております。

 

センターの案内

 

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事務局長 飯島澄子

 

本年四月に当センターが設立されて四か月が経過しました。この間(八月八日現在)に寄せられた電話及び面接相談の申込件数は七六六件に及んでいます。

当センターは、総務部門・研修室・相談部門と三つのフロアーに分かれており、それぞれが明るく、落ち着いた雰囲気で活動しています(写真参照)。

相談部門は、面接室二室と電話相談室一室(電話三台)の他に、相談関係のスタッフ全員が話し合える場も用意されています。職員のうち、電話や面接の相談に携わっているスタッフは、特別に専門的な訓練を受けています。

また、ボランティアの養成講習等で使用する研修室は、約四〇名収容出来ます。

本センターの業務内容の中でも、来年度実施予定の直接支援については特に力を入れており、その準備段階として、例えば被害者宅への訪問や法廷付き添いなど、出来るところから開始しています。いずれも被害者の気持ちを最も大切に考えながら、出来るところで援助するという心を基本としています。

また、相談・支援業務に関わるボランティアの養成を行ったり、スタッフの資質向上を図るために法律関係、精神医学関係、カウンセリング関係などの研修を重ねたり、スーパー・バイザーを迎えて事例検討等を行っています。

間接支援では、自助グループ(犯罪・交通被害遺族)の交流会や「自助グループを始める人のための研究会」も行っています。そこでは、被害者自らが心情を語り合いながら、精神的に立ち直れるよう心を配っています。

その他、相談者に関係先を紹介するために、関係機関との連携を密にし、時には訪問して現状を把握したうえで、どんな問題の時はどの機関の誰に紹介すれば良いかというところまで責任が持てるようにしたいと、スタッフ一同努力しています。

 

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