2) 藻場成立可能性海域と成立阻害要因
以上のように、水温、塩分、光量及び流速等の環境条件から、概ね現況の藻場形成水域が再現できたが、今回の検討では波浪及び波浪による砂面変動の影響並びに出水時等の特異的な条件下での環境変化を加味できなかったので、十分に再現できない水域もみられた。
東京湾における藻場形成を規定する要因としては、光量が強く関与しており、光量の不足による影響が大きい。また、湾奥から湾中央にかけては、低塩分の影響が関与しており、低塩分に耐性のあるアマモ、オゴノリ等を除くと、低塩分の影響が分布を規定する要因となっていることが示された。
光量は、海面からの入射した光が水中の懸濁物等によって減衰するため、下層ほど光量は少なくなる。一方、低塩分水は比重が軽いために表層近くに分布し、下層では塩分は高い傾向を示す。
また、流速に関しては、一般的に流速が大きいほど生長には適しているが、遊走子の着生、幼体の保持の観点から、再生産を期待するうえでは、あまり大きな流れは生育に支障を及ぼすことになる。
シミュレーションでは表層から海底直上層まで水温、塩分、光量等を計算しているので、前述した生育条件を満足する水域を層別に検討した。なお、ホンダワラ類、ワカメについては、限界となる流速条件が把握できなかったので、他の海藻の例から10cm/sを生育限界と想定して検討した。
環境条件からみた藻場形成可能性水域を図4.4.6〜図4.4.10に示した。
アマモ場は、湾奥から湾口部までの沿岸域に形成される可能性があり、形成可能性のある水深は、光量の関係で、湾口へむかってより深くなる傾向を示している。また、表層では潮汐によっては比較的速い流れが出現することから、湾奥の一部(比較的沖合)、横須賀市沿岸では表層から2mまでは形成が困難であるが、2m以深で形成の可能性があると判断される海域がみられる。
ガラモ場、アラメ場は、富津と横須賀市とを結ぶ線より以南の沿岸域に形成されると判断され、比較的沖合では、流速の関係で、表層から2mまでは形成困難であるが、2m以深であれば形成の可能性のある水域がみられる。
ワカメ場、オゴノリ場は、湾奥から湾口部までの沿岸、広い範囲にわたって形成の可能性がある。湾奥では2m以浅に限定されるが、湾中央から湾口部では2m以深でも形成の可能性がある水域がみられる。