1. 調査の背景及び目的
アマモ場、ガラモ場等の藻場は、魚介類の幼稚仔の保育場であるとともに、栄養塩類の吸収や酸素の放出によって海洋環境の保全に重要な役割を果たしているが、東京湾や伊勢湾等の内湾海域では埋め立て等の開発と環境の悪化により減少の一途をたどっている。
本調査は、東京湾をモデル海域として、藻場形成の可能性と、藻場形成を阻害する要因を明らかにし、藻場造成適地選定や効果的な造成方式を策定するための基礎資料とするものである。
2. 調査の方針及び今年度の目標
本調査の方針を図1に示した。
藻場形成を阻害する要因として、一般的には、水温・塩分、光環境が考えられる。
藻場を構成する主な海草・藻類について、生態的知見を整理し、主な環境因子を抽出して、形成条件を検討した。
また、東京湾をモデルケースとして、主な環境因子をシミュレーションにより再現し、これと藻場形成条件とを対比して藻場成立の可能性のある海域をマップ化するとともに、成立阻害要因について検討した。
作成したマップについては、既往の藻場分布図と比較し、マップの妥当性を確認するとともに、相違する場合には、その問題点を検討し、今後の課題を提起した。
3. 調査内容
調査内容は、以下のとおりである。
1] 東京湾における藻場の分布
既往資料を収集し、東京湾における藻場の分布及び主な構成種を整理した。
2] 主な海藻・草類の生態
藻場成立条件を解析するため、藻場を構成する主な海草・藻類の生態に関する文献、資料を収集し、海草・藻類の生態及び生育に関係する環境因子を抽出した。
3] 藻場成立に係る環境因子の現況解析
東京湾における、水深、流況、水質等に関する実測資料を収集し、これを基礎として流況、水質に関する現況再現シミュレーションを実施した。