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公海上における武装強盗・海賊類似事例に対するわが国の対応

 

立教大学教授 橋本博之

 

1 はじめに

本報告では、近年において、公海上の船舶における武装強盗事例ないし海賊類似事例(国際法にいう海賊に該当する事例ではない)につき、わが国の海上保安庁・海上保安官が何らかの対応をした事例を取り上げて、行政法学、なかんずく警察法の観点から若干の考察を行うこととする。

わが国において、行政法学・警察法の観点から海上保安行政を理論的に検討することは、その必要性を指摘されながらも、闊達であるとは言いがたい状況がある。本報告では、右の議論を活性化する場合の思考軸となるべき海上警察の法概念(国内行政法学上の概念である)の構築に向けた議論の整理、ということも、意図されている。

 

2 海上警察の法概念の必要性

(1) 序

わが国に属する海域の管理については、その重要性が疑いないものであるにもかかわらず、わが国の国法上の重大な空白領域となっている。平成11年には、地方分権改革とリンクする形で海岸法の改正が行われて、従来から課題とされてきた法定外公共用物たる海岸の管理法制について画期的な整備がなされた。すなわち、新しい海岸法では、公共団体が所有権等の権原を持つ「公共海岸」というカテゴリーが新しく設らけ、その土地所有権を国から地方公共団体に譲与するという形で、海岸の管理に係る法的仕組みが整備されたのである。

 

 

 

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