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東南アジアにおける海賊・武装強盗に対応するためには、第一に、関係国間の密接な連絡・通報体制を整備して、関連情報を迅速に伝達して関係国が情報の共有し、それに基づいて関係国すべてが対応することが不可欠である。

また、法律的には、海賊・武装強盗犯人がいずれの国に逃げてもこれを捕捉、逮捕し、確実に処罰することが必要である。つまり、犯人および海賊船舶の取締り(執行管轄権)と処罰(裁判管轄権)の両面の対応が求められる。そして、そのために関係船舶の旗国、犯行地国、犯人の国籍国、船舶の寄港国など、多くの国が密接に協力しなければならない。例えば、関係国による海域の共同パトロールを行ったり、海賊船舶が犯行地国の海域から別の国の海域に逃亡したとしても、犯行地国の警備当局が追跡を継続できるような枠組みを整備すること、また、各国は自国国内法令を整備するとともに、犯人および犯罪船舶の所在する国はその身柄および船舶を拘束し、処罰を確保することが要求される。さらに、その処罰を確実にするためには、関係国間の証拠の収集、提供あるいは犯人の引渡しを中心とした司法・捜査共助体制の枠組みも整えてゆく必要がある。そのためには、東南アジア各国を中心とした関係国が、一層、その方向で協力していくことが求められていると言えよう。

 

〔注〕

(1) MSC73/21 (12 December 2000) para. 14. 2.

(2) UN Doc. A/54/429 (30 September 1999) para. 231-234.

(3) 英国の主要な海賊関係国内法としては、PIRACY ACT 1698 (11 Will 3 c 7), PIRACY ACT 1721 (8 Geo 1 c 24), PIRACY ACT 1837(7 Will 4 & 1 Vict c 88), PIRACY ACT 1850 (13&14 Vict c 26)がある。Halsbury's Laws of England 18 (4th ed.) p.787.

(4) P.B Potter, The Freedom of the Seas in History, Law, and Politics (1924) P. 50.山本草二「セルデン海洋論の実証的根拠」熊本大学法文論叢7号(1955) 38頁。

 

 

 

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