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・船内の現金や貴金属等を強奪する。

・近年では、乗組員を救命ボートに移乗させるなどして、積荷及び船体自体を強奪する例も発生している。

これを具体的な事件でみると、次の3件が特に問題とされた。

1] テンユウ号事件

平成10年9月27日に韓国に向けてインドネシアのクアラタンジュン港を出港したテンユウ号(船籍パナマ2660トン、アルミインゴット約3000トン積載)は、出港直後のマラッカ海峡から行方不明となり、船体は同年12月21日に中国の張家港で発見されたが、船名はSanei I(ホンジュラス船籍)に偽装され、中国人12名インドネシア人2名の乗組員がインドネシア人16名に入れ替わっていた。積荷のアルミインゴットは、中国で売却されており、その乗組員は行方不明のままである。

2] アロンドラ・レインボー号事件

平成11年10月22日、インドネシアのクアラタンジュン港を出港直後のアロンドラ・レインボー号(船籍パナマ7762トン、アルミインゴット約7000トン積載)は、マラッカ海峡で海賊に乗っ取られ、日本人2名(船長、機関長)とフィリピン人15名の乗組員が、ゴムボートで11日間漂流させられた。貨物の一部は売却された。同船は、船名をMega Ramaに変更され、乗取犯とは別の乗組員15名によりインド西方を航行中にインド当局に捕捉され、インドのムンバイに回航された。

3] グローバルマース号事件

平成12年2月23日、パナマ船籍のケミカルタンカー、グローバルマース号(韓国人7名、ミャンマー人10名乗組)が、マレーシアのポートケラン港から、インドのハルディア向け出港後行方不明となった。3月10日に至り、乗組員は全員無事で、タイのバンガー県ブラグリー警察に保護された。船長からの事情聴取によれば、航行中のグローバルマース号に突然、銃及びロングナイフで武装した海賊が侵入し、乗組員は手錠をかけられて拘束され、乗組員の所持金等が奪われた。その後、乗組員は漁船に移乗させられ、さらにエンジン付小型ボートに移され、放置された。この事件の場合には、日本の船舶会社が運航するグローバルマース号が海賊に襲われた可能性が高いとみて、海上保安庁はヘリコプター搭載巡視船「やしま(5000トン)」を現場海域に向かわせ、捜索を行っている(3)

 

 

 

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