このような状況から、海上保安庁は我が国の油防除に関する技術移転を要望する国々に対し積極的に協力しており、様々なODAのスキームを利用して技術移転を行ってきたところである。
これまでの技術移転内容は、主に流出油の性状、油防除資機材の取扱いといった現場作業員を養成する技術移転(IMOが定める油防除のプログラムレベル1A)であり、現在では移転の成果が実を結び、相当数の人数を油防除の現場作業員として養成した。今後は養成した現場作業員を指揮することができる者を育成するための更に高度な技術移転が要望されてきていることから、大規模な油流出事故に対し被害を極小化するため各防除部隊を効果的にオペレーションすることができる指揮官としての技術(IMOレベル2A)を移転する内容に発展させていく方針である。
また、油流出事故発生時に効果的に対応するためには、油防除資機材や人員が配備されていても、それらを具体的・効果的に動員し、配備する計画(地域緊急時計画)が必要であるが、被援助国では地域緊急時計画の策定ノウハウがなく、計画策定のための技術移転を我が国に要望する声もあることから、これらの技術移転についても積極的に対応する。
さらに、本年3月にIMOにおいてOPRC条約の対象物質を油に加えて有害危険物質に拡大するOPRC-HNS議定書が締結される等、現在世界的には油以外の有害物質等の防除についても、油と同様の防除措置が必要であるという認識になってきており、今後は油以外の有害物質等の防除手法に関する技術移転も行う予定である。
3. 海洋環境の保全の分野
海洋環境の保全に関しては、MARPOL73/78条約による汚染防止、OPRC条約による防除システムの確立等の施策が講じられるなど、IMO等国連を中心として従来から積極的な取組みがなされており、海上保安庁もこれに積極的に協力してきているところである。
海上環境の分野における国際協力の1つとして、アセアン、中近東地域及びその他の開発途上国において、海洋汚染防止に携わる技術者を中心に、同分野に関する先端知識(諸法令・条約概論、海洋汚染に対する取締と運営等)、技術(油等の識別、分析法等)を習得させるとともに、我が国の海上保安行政機構、活動、海洋環境改善方策等を紹介し、参加各国の海洋保全の充実強化に資することを目的として昭和58年からJICA集団研修事業に参画している。