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漢詩初学者講座 伊藤竹外

吟詠家に漢詩のすすめ―(三十一)

 

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伊藤竹外先生プロフィール

愛媛漢詩連盟会長、(16吟社、会員200名、毎月指導、添削)、六六庵吟詠会総本部会長(吟歴58年)、財団公認愛媛県吟剣詩舞道総連盟理事長、財団法人日本吟剣詩舞振興会理事

平成5年 文部大臣地域文化功労賞

平成8年 財団吟剣詩舞大賞功労賞

著書 豫州漢詩集(編著)、南海風雅集(編著)(2版)、漢詩入門の手引き(9版)他。

 

一、女流作詩家に期待する

先般のシドニー五輪では世界から一万人の選手が各国の名誉を担ってそれぞれの競技を争って活躍しましたが、その中で女性が何と40%を占め、日本でも金5銀8銅5のメタル18箇の中、13箇は女性の健闘によるものでした。

今、吟界も女性の進出が著しく、全国コンクールや愛連吟士権の予選通過者並びに入賞率は圧倒的に男性陣を凌駕していますが、各流、各派の会員数も已に女性が60%を越えているものと思われますし、剣詩舞界に至っては90%を超えていることでしよう。

一方漢詩家では江戸末期に梁川紅蘭、江馬細香、原菜蘋の三閨秀作家が喧伝されましたが、その他には女流詩人の名を聞いておりませんし、明治、大正、昭和詩壇においてもその衰退と相俟ってほとんど女流の名は伝えられなかったようです。

今日、全国の吟界の中から漢詩を学ぶ者が追々と増え、本欄の投稿者も女流が多く見られ、愛媛県では十六吟社、百八十八名中、七十名の女性が記録され、毎月の吟社例会も熱心に受講し、投稿詩も多くなっています。

この趨勢では吟剣詩舞家と同じく女流の進出と活躍が大いに期待されるところであります。

女流吟詠家に作詩の勉強をおすすめする所以であります。

 

二、課題詩「詠〇〇城」について

戰国時代から覇を争った英雄たちが割據してそれぞれ自らの居城を築いたのは、英智を結集し果断な決断力と統治力の象徴をなすもので、四百年後、今なお偉容を聳やかし地方的特色や文化の遺産を伝えると共に観光の中心となっています。当時の名將の苦辛と或はその興亡に思いを馳せ、我々はこのすぐれた祖先を頌え、その志を継承するのは漢詩の素材として最も適したものと思います。

さて投稿詩を見るにこれが案外むつかしいものと感じました。今月も嚴選となりましたのは作詩力の実力によります。

まず初級から中級への作詩能力を身につけなければ内容を十分活かすことはできません。

 

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