喜びの剣舞各部優勝者(左から上岡治生、鈴木宏実、白石健太、長坂紗職、中瀬古眞一郎の各氏)
山岡哲山専務理事の開会の辞で始まった、平成十二年度全国剣詩舞コンクール決勝大会は、国歌斉唱、財団会詩合吟とつづき、河田神泉副会長が財団を代表して挨拶されました。副会長は競演者に激励のエールを送るとともに、今世紀最後の大会にふさわしい、力を出し尽くした舞台を見せてほしいと話されました。その後、競技実施要綱の説明があり、審査員が紹介され、大会の幕が切って落とされました。
全国各地の予選を勝ち抜いてきた百二十八名の剣詩舞家が火花を散らすその競演は、午前が剣舞と詩舞の幼年・少年・青年の部でした。ここ数年、剣詩舞の躍進は目覚ましいものがあり、今年も質の高い舞台が期待されましたが、その期待を裏切らない素晴らしい演舞が次々と披露されました。
剣舞幼年の部では愛知の白石健太くんが吟題「木村重成」を見事に演じ優勝しました。少年の部では愛知の鈴木宏実さんが「稲叢懐古」を華麗に舞って優勝。青年の部でも愛知の長坂紗織さんが「馬上偶成」を優れた舞で優勝を果たしました。愛知勢が優勝を占める結果となり、剣舞に強い愛知を強く印象づけました。
詩舞幼年の部では愛知の服部幸海さんが「嵐山に遊ぶ」を子供らしい素直な舞で優勝しました。少年の部は岡山の平田陽子さんが「早に白帝城を発す」を立派に演じきって優勝。青年の部は愛知の近藤智美さんが、途中音飛びによる再演というトラブルを乗り越え「和歌・ゆきくれて」を熱演して優勝しました。
皆さんこの日を目指して精進してきたのでしょう、誰もが立派に堂々と自信を持って舞っており、見る者に深い感動をあたえてくれました。
午後は剣舞と詩舞の一般一部と二部が行われました。この部はベテランらしい円熟した舞を見ることができました。剣舞一般一部の優勝は三重の上岡治生さんが「馬上偶成」を演じて優勝。二部は大阪の中瀬古眞一郎さんが「馬上偶成」を堂々と演じて優勝しました。
詩舞一般一部は兵庫の山岡貴子さんが「春夜洛城に笛を聞く」で優勝し、二部は兵庫の橋本一恵さんが「京都東山」で優勝を果たしました。一般の部はさすがと思わせる演技が多く、目の離せない舞台でした。
すべての競吟が終了すると、石川健次郎総合審査委員による講評が行われました。講評を要約すると次のようでした。
●作品のムードだけで演技する傾向が強い
●作品の中身を理解した表現技法が大切
●扇子が主に使用されているが、どういう状況で扇子を使うのかを考えて、扇子を選んでほしい。
●極彩色の扇子が流行だが、深みのある色合いも良い
●作品を細かく深く掘りさげてほしい
●作法に従った抜刀をしてほしい
●今回は紙一重の差で、選に入らなかった人も次点と思って次はがんばってほしい
など、いろいろな注意点が指摘され、演技者だけではなく、会場に訪れた剣詩舞愛好家の人たちも真剣に聞き入っていました。
そして、入倉昭星常任理事から剣舞と詩舞の一般一部・二部の優勝者、入賞者が発表されると、舞台は入賞者表彰式へと移りました。この表彰式には笹川鎮江会長が療養をおしてご出席くださり、会場から大きな拍手を受けていました。
表彰式では河田神泉副会長が一人ひとりに賞状を渡すとき、演技者の顔から緊張感が薄れ、笑顔がこぼれていました。そして、鈴木吟亮常任理事が閉会の辞で平成十二年度全国剣詩舞コンクール決勝大会を締めくくると、大会も成功裏のうちに無事終了しました。多くの剣詩舞道家が目指す厳しいコンクール、それだけに挑戦する人は終わったこの日から鍛練、精進に励むことでしょう。