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'01剣詩舞の研究 4] 一般の部

石川健次郎

 

剣舞「出塞行」

詩舞「越中覧古」

 

剣舞

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◎詩文解釈

作者の王昌齢は盛唐の詩人で誕生の詳細は不明だが、役人生活の傍ら優れた詩を数多く残している。彼は実際に戦場に行った経験がないにもかかわらず、この作品以外にも「従軍行」のような、当時(唐代)北方異民族の襲撃を防ぐために都の長安から西域の地(辺塞)に派遣された守備兵をモデルにして、彼らの苦悩や望郷の思いを詠んだ。

詩文の意味は『草も枯れて白く乾いてしまった荒野に立って、なつかしい都の方角(東方)を見渡したが、そこにはただ黄河の河水が尽きることなく(東に向って)流れ去って行くだけである。自分が立っているここも、秋空のもと果てしなく広がる野原だが、人っ子一人通らない。ハッと気がつくと、折から馬に乗った者が、東の方角に進んで行く(又は向って来る)。さて彼は一体何者なのであろうか』というもの。

 

◎構成・振付のポイント

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白草の荒野

 

剣舞作品として、この最後の意外性を巧みに振付に応用する事が大切、次にその一例を述べてみよう。

<起句>まず前奏で下手から抜刀のまま敵に追われ、大きく回って登場、一度は下手に押し戻しながら斬り合いを見せ、手負いの身をかばいながら上手を向き納刀して望郷の思いにふける。

<承句>扇を使って河の流れと、櫓(ろ)に見立てた船の動きを見せ、足はにじり足で小さな円形を描き元の位置に戻る。

<転旬>中央に坐って天を見上げ、寒気を催して立上り、四方に戦友を呼びつつ、やや狂気した動きを見せ、下手奥に進む。

<結句>扇を馬の頭に見立て、下手奥から上手前に進む。次に役変りして自分が鉢巻をして馬上の武人となり抜刀して敵と戦いながら最後は敵を追って下手に退場する。

 

 

 

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