日本財団 図書館


漢詩初学者講座 伊藤竹外

吟詠家に漢詩のすすめ―(二十九)

 

009-1.jpg

伊藤竹外先生プロフィール

愛媛漢詩連盟会長、(16吟社、会員200名、毎月指導、添削)、六六庵吟詠会総本部会長(吟歴58年)、財団公認愛媛県吟剣詩舞道総連盟理事長、財団法人日本吟剣詩舞振興会理事

平成5年 文部大臣地域文化功労賞

平成8年 財団吟剣詩舞大賞功労賞

著書 豫州漢詩集(編著)、南海風雅集(編著)(2版)、漢詩入門の手引き(9版)他。

 

一、吟遊こそ作詩の好詩材

今月の江湖吟遊雑詩の投稿詩を見るに吟詠家はよく到る處を吟遊して楽しんでいる様子が窺われます。その時その場所を巡遊して素晴しい名勝を楽しんでも、それはすべて一瞬に過ぎ去りその余情も数日にして消え去ってしまいます。

若し漢詩や歌や俳句にその感懐を留めることが出来ればこれこ過ぎる喜びはないでしょう。李白も杜甫もその感慨を行く處ごとに哀歓を賦して伝え伝えて千二百年も歎賞されて来ました。

先般五月、愛媛漢詩連盟の会員三十余名が徳島吟行を試み、車中即事から始って祖谷、大歩危渓谷、眉山、吉野川などの景観に加えて阿波踊を楽しみ、更に淡路島の萬国花博覧会に及びその得た漢詩は拙詩即詠十八首を始め百二十余篇を得て「阿州吟遊絶句集」を刊行しました。

各自が是より四季の題詠から一歩脱して吟行の度毎に作詩して詩嚢に収められ、発表される事をお薦めする所以であります。

唯、これはどれほど吟歴を積まれても作詩の勉強をしなければ一行の感懐も賦すことはできません。吟詠家各位の作詩に対する開眼を期待すること切なるものがあります。

 

二、江湖吟遊雑詩の添削について

江湖とは大きな川、湖のこと、ひいては世間、民間の意で全国各地の名勝地を吟遊して雑詩即ちいろいろの事物、感懐を詠んだものの中から特定の場所を選んで賦してもらったのが今回の課題です。詩語集にある風景はどこにも通用するような漠然としていますのでこの特定の場所にふさわしい詩語を探し表現することは初学者にとっては大へんむつかしいことです。例えば次の如き自己流の表現は通用しません。

009-2.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION