日本財団 図書館


漢詩初学者講座 伊藤竹外

吟詠家に漢詩のすすめ―(二十八)

 

009-1.jpg

伊藤竹外先生プロフィール

愛媛漢詩連盟会長、(16吟社、会員200名、毎月指導、添削)、六六庵吟詠会総本部会長(吟歴58年)、財団公認愛媛県吟剣詩舞道総連盟理事長、財団法人日本吟剣詩舞振興会理事

平成5年 文部大臣地域文化功労賞

平成8年 財団吟剣詩舞大賞功労賞

著書 豫州漢詩集(編著)、南海風雅集(編著)(2版)、漢詩入門の手引き(9版)他。

 

一、吟詠家に期待する

現代の漢詩界の育成、発展に努められた多くの先人諸賢の中で太刀掛呂山先生を第一に推す方が多いと思いますが、その衣鉢を守って田中呂南先生の後、全国に八百の会員を擁する「山陽風雅」誌の主宰者豊嶋肱水先生が今月の月刊誌に、漢詩界の将来を危ぶみ憂うるの貴重な一文を拝見しました。ごもっともな意見も多く私なども浅学菲才ながら驚馬に鞭うって奎運の挽回を願って日夜努力しつつあるところです。

本欄を呂南先生の後を受けて二年有半、全国の漢詩家よりの投稿を通じ現在の作詩家は吟詠出身者が大半で各県各地でそれぞれ熱心に勉強を続けていることは頼母しい限りであります。この事が窺われるのは拙著「漢詩入門の手引き」の購読者が百数十名に及び、更には先日、大阪にて某吟詠会の指導者吟詠講習会に招聘を受け、作詩のすすめは一言述べたに過ぎませんでしたが、なんと右拙著八十三冊の注文を頂きました。

曽て宮崎東明先生が吟詠指導者たるもの漢詩を勉強しなくてはならないとの提唱から、関西吟界に多数の漢詩家が育ちました。愛媛でも十六吟社、二百名が今勉強中ですが、その殆んどは吟詠家であります。今後の漢詩界は吟詠界から優秀な人材が輩出することを期待してやみません。

 

二、課題「詠楠公」について

大楠公六百年祭の事業の一端として湊川神社の藤巻正之宮司が昭和十年五月、漢詩、和歌、詞文など千数百篇を輯めた「楠公遺芳」(四百八十頁)の大冊を摂楠流藤原摂楠宗家より先般寄贈を受けましたが、全篇、楠木正成、正行公の遺烈を脈々と伝えていることに感動して現代漢詩家による詠史を募集したものでありますが、さて投稿詩を拝見するに意にかなうものは極めて少なく今月も厳選となりました。

 

三、初心に返って基礎を学ぶ

かなり詩歴があると思われるのに初級の基礎である返り点、送り假名の間違いが随所に出て来ます。

009-2.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION