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七、狂言における舞の表現

狂言大蔵(おおくら)流東次郎家四世 山本東次郎則寿(やまもととうじろうのりひさ)先生

 

<講師紹介> 昭和十二年生まれ。狂言大蔵流・故三世山本東次郎則重の長男。父に師事。昭和十七年十一月、山本会の『痿痺(しびれ)』のシテで初舞台。(昭和二十七年九月、矢来能楽堂舞台披き能で『三番三』、三十三年十二月、都立劇場特別鑑賞会で『釣狐』、四十六年三月、立合能で『花子』を披く。)昭和四十七年五月、四世東次郎襲名。山本会を主宰。東次郎家独特の剛直さに、端麗さを加えた芸風で知られる。昭和三十九年度『茶壷』のシテで芸術祭奨励賞受賞。平成四年度芸術選奨文部大臣賞受賞。平成十年、紫綬褒章受章。重要無形文化財総合指定・日本能楽会会員。(著書に「狂言のすすめ」がある。)

 

新しい人間の発見を!

狂言も能と同じく、謠(うたい)と舞がすべての基本ですから、子供のころ、「小舞(こまい)」を稽古しながら、ひたすら立つこと、座ること、歩くこと、扇の開け閉め、そんなことを徹底的に稽古させられました。

人間、持って生まれたものはさしたるものではない、自分を一度否定して、新しく一から造っていく、努力して勝ちとったものを尊いとするのです。こういう考えは、実は過去の日本人全体が持っていた精神文化でした。戦後五十年で一億総自己主張みたいになってしまいましたが、そういう風潮の中で、だからこそ、能や狂言の世界では断固としてここは譲ってはならないというところがあるはずで、そうでないと伝統ではなくなるという気がしております。

よく、なぜ狂言をそんなにむずかしく考えるんだ、と言われますけれども、でも、ただ笑って終わるより、人間のさまざまな心の姿が見えた時にはるかに面白いものになると思うのです。見る方の人生観によって、演者自身も気づいていないことを発見してくださることもあると思います。人間の生き方?そんなことどうでもいい、という人は別ですが。

 

(メモ)

 

 

 

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