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歩き方

普通、舞台の袖から中央までの距離は5〜8メートル位ですから、自分の歩幅に合った足の開きとリズムで、ややつま先に力を入れて進みます。両足は二本のレールの上を真直ぐに進むように、その間隔は男性ならば15センチ位、女性は10センチ位が上品です。緊張して綱渡りのように一直線上を歩いたり、能の“摺り足”のように歩く必要はありません。視線は前後左右をきょろきょろ見渡したりせず、前方を見て進みます。恥ずかしいので下ばかり見ているのも陰気でいけません。腕は、和服のときはあまり振らない方がよく、手の指は軽くにぎります、ただし女性はにぎるより軽くのばした方が上品です。要は意識過剰にならず、自然体がよいのです。

なおカラオケ伴奏などの前奏は、普通15秒前後ですから、少し余裕を持って、中央又は指定されたマイクの前に着く様に注意して下さい。

 

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舞台での歩き方

 

歩行コース

一人から三人位までの登場コースは、袖からマイク位置まで最短距離を直線的に進み、マイクに近づいたら歩調をゆるめながら客席に向くように調節します。演出的な指示以外は、俗にいう“軍隊調”の角(すみ)を取った歩行コースや、“右向け右”的な方向調節はしない方が自然です。多人数による合吟などの場合は、舞台の状況で一概にいえないので、係員の指示に従って下さい。

 

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舞台での歩行コース

 

礼法

演者が観客に対して礼の心を表わすのは「吟詠芸術」の信条です。ただ舞台での礼の姿は形式的な動作にすぎませんが、その心は舞台から観客席に伝わるものです。前述のように、まず舞台の袖から一歩舞台に入ったなら、客席中央部をしっかり見てから目礼をして歩き出します。この最初の目礼が観客からの印象を強め、また演者も観客を認識する重要な機会になります。

さてマイクの前、一・二歩手前で止まり客席に向って立礼します。あまり深々と頭を下げるのも慇懃(いんぎん)無礼です、といってあっさりすぎるのもいけません程々に自然の感じにして下さい。マイクの手前で止まったのは礼の動作で頭をマイクにぶつけないためです、従って前奏が終る頃にはマイクに近寄って下さい。吟が終わったら、一・二歩退って立礼し退場に移ります。

舞台上での“礼”は“芸”の始まりまたは終りの形でもあります。従って連続された構成吟詠などでは、流れの都合で礼を省(はぶ)くことが多く、またコンクール等では時間を節約するために礼を省略する場合があります。しかしこうした場合でも、礼の心を持って舞台に立つことが、観客を魅了することになるので、決して形だけにとらわれないで下さい。

 

退場

歩き方も歩行コースも登場の要領でして下さい。よく見かけることですが、不出来の時に“ふてくされ”た態度や、“てれ笑い”などをするのは大変見苦しいものです。

 

 

 

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