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第8節 熊本県久木野村

 

はじめに

 

ここで考察する熊本県阿蘇郡久木野村は、農業を主産業とする純農村であったが、近年、観光施設の整備に伴い、年間百万人前後の観光客を惹きつける村となった。また、村内では、豊かな自然、快適な気象条件、阿蘇山塊や南外輪山の素晴らしい眺望、などに加えて、道路網の整備による熊本市・熊本空港や周辺町村への近接性が増したことにより、民間企業による小規模な住宅地や別荘地の開発が処々に見られるようになった。UIターンが徐々に進行しているのである。

そうした中で、村の行政は、農業と観光を軸とした産業振興に積極的に取り組み、そのことが若者の定着の条件や環境を整備することとなっている。しかし、UIターンによる定住、とくに若者の定住それ自体を奨励する施策に、意図的・体系的に取り組んでいるわけではない。また、Iターン者、つまり村外者の転入に対しては、それによる種々の問題の発生を危惧しているが、民間の宅地開発に対するものも含めて、村としての具体的な施策を取るに至っていない。UIターンに関しては、久木野村を、そうした村として位置づけることができよう。

 

1. 地域の概況

 

久木野村は、熊本県の北東部、旧阿蘇火口原の南部に位置する人口2,659(平成12年9月30日現在)、面積51.26km2の小村である。村域は、南部と西部を阿蘇南外輪山とその山麓で占められ、北は阿蘇山塊と南外輪山の間の南郷谷と呼ばれる低地を東から北西へ流れる白川によって画されている。その白川左岸の低地と外輪山山麓の台地に耕地が拓け、集落が発達している。村内を白川に沿って走る県道熊本高森線、村外、白川の北側をそれに並行する国道325号線は、本村を熊本空港へ約40分(約25km)、熊本市へ約1時間(約40km)で結んでいる。村の西端では県道熊本高森線の俵山トンネルが現在掘削工事中で、この開通(平成15年供用開始予定)により、本村と熊本空港・熊本市との時間距離がかなり短縮されるものと期待されている。また、本村から、白川の北を並行する南阿蘇鉄道と豊肥本線(愛称阿蘇高原線)経由で熊本市へは40km余りの距離である。

この村の主な産業は、農業で、稲作(平成6年の粗生産額121千万円)を中心に、花卉・苗木類・工芸作物・野菜の栽培(それぞれ7千万円・6千万円・4千万円・3千万円)、および用牛の飼育(8千万円)が行われている。近年、稲の転換作物として蕎麦や大豆・麦の栽培が、観光と結びついた農業として広がりを見せている。

村の産業構成を就業人口で示したのが第1表である。農業就業人口は減少傾向にあるとはいえ、平成7年には依然として約3割を占め、農業がこの村の主力産業であることがわかる。ついで、増加傾向が目立つサービス業就業人口の割合は3割弱を占め、最近の観光産業の発展がうかがえる。製造業就業人口は、平成2年から7年にかけて大きく減少して7年には1割に満たず、一方、建設業就業人口は、この間に2倍以上の著しい増加を見せている。後者は、公共的な建設・土木事業の増加によるものと思われる。

 

 

 

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