しかし、UIターン者用の住宅は量的にもまだまだ拡充が必要とされている。企業への新規就業者は減ったものの、工芸家や各種の研修生に対しての住宅供給の需要は多い。さらに、農林業に携わる町民(若者)にも、実家(敷地)を離れての独立を望むものが少なくない。こうした志向性は、Uターンの潜在的希望者の中にも存在すると思われる。したがって、住宅の整備は、今後とも横田町のUIターンの対策において、重要な位置を占めている。
町では、従来の公営住宅建設や民間賃貸住宅建設支援事業による量的拡充とともに、独身者・新婚夫婦向け優良住宅の建設や、分譲住宅、菜園付き住宅の整備、さらには公園墓地の整備など、質的拡充をも計画している。
横田町の場合、こうした住宅の建設とともに、空き家バンク制度がUI対策としては特筆に値する。この制度は、平成4年度に始められたものであるが、町内の自治会長を通じて調査・登録した空き家を、「ふるさと人材確保推進室」の仲介でUIターン者に貸与するものである。双方の意向の調整や相談には推進員があたり、町としては関与しないし財政的支援もしていない。双方の意向や事情から、当初は2〜3年の賃貸契約が一般的という。
この空き家バンク制度は、とくに工芸家や各種の研修生の受け入れにとって、有効に機能している。各種の研修生に対しては、町が整備した住宅や、「ふるさと島根定住財団」が貸与する「トレーラーハウス」も、有効に使われているが、工芸活動の拠点を求めるものや、土いじりや農家風の住居を求めるものにとっては、そうした住宅やハウスよりも、また公営住宅よりも既存の空き家が好まれるからである。
空き家バンクに登録されている数は25戸で、そのうち21戸が埋まっている。こうした状況は、制度発足以来あまり変わっていない。希望は多いのだが、供給(登録)数が増えないのだという。また、埋まらない空き家は、連担地から離れすぎていたり、冬期の生活が困難だったりするものばかりだという。推進員としても、空き屋となっている事情について、あまり踏み込むことができず、新たな登録を確保できない面があるという。また、現状のままなら貸しても良いという人はいるのだが、即入居となるには最低限の改修(特に水回り)が必要なものが多い。貸し手も借り手も改修費を負担することには二の足を踏む状況があり、改修費を行政などで負担できる制度があれば、空き家バンク制度の機能は大きく前進するものと思われる。